これまでの高専とは異なる、まったく新しい学校として「神山まるごと高専」が2023年4月に正式に開校しました。
神山まるごと高専は、初めての入試を終えて、無事に第1期生を迎え入れています。
初年度の入試結果から、神山まるごと高専がどの程度の人気を集めたのか、そして何名の入学生を迎え入れることとなったのか、確認していきます。
※2023年11月以降に実施される2024年度入試については、以下のページを参照してください。
神山まるごと高専の2023年度入試の結果(推薦入試)
まずは、神山まるごと高専の2023年度推薦入試の結果を確認しておきましょう。
神山まるごと高専の2023年度推薦入試は、1次試験が書類審査として2022年11月1日〜11月10日まで行われました。
また、推薦入試の2次試験は2022年12月3日に行われました。
願書には調査書などのほかに、課題レポートを提出することとされています。
課題レポートには、文章で作成するものだけでなく動画によるものもあり、この学校の多様性を表すような内容となっています。
また、他の高専の推薦入試は書類審査と面接による選考が行われることが多いのですが、神山まるごと高専の場合、1次試験は書類審査のみ、2次試験はワークショップと面接という流れで実施されました。
入試要項では、推薦入試による合格者は約12人、つまり定員の3割程度とされていました。
これに対して受験人数は234人、うち1次試験合格者が40名、そして2次試験合格者が19名となりました。
推薦入試の合格者が想定より多くなることは、公立高校の入試においてもたびたび起こります。
一般入試だけを考えている人にとってはつらい面もありますが、推薦入試で学校が求める学生像にあう人がいれば、定員を上回っても入学してほしいと考えるのでしょう。
結果的に、推薦入試において、当初の予定を大幅に上回る合格者を出すこととなりました。
神山まるごと高専の2023年度入試の結果(一般入試)
次に、神山まるごと高専の2023年度一般入試の結果を確認します。
神山まるごと高専の2023年度一般入試は、1次試験が学力試験(国語・数学)と小論文で2023年1月9日にオンラインで行われました。
また、一般入試の2次試験は2023年1月28日にワークショップと面接で行われました。
一般入試の願書にも、調査書のほか課題レポートを提出することとされていました。
ただし、推薦入試と共通のテーマもあるため、推薦入試と一般入試で課題レポートを作り変える必要はありません。
入試要項では、一般入試の合格者は約28名とされていました。
ただ、先に終わった推薦入試の合格者が想定より多くなったため、一般入試の定員は少なくなったと考えるのが普通です。
結果、一般入試の受験人数は165人に対して1次試験の合格者が54名、そして2次試験の合格者が25名となりました。
一般入試の募集人数約28名に対して、実際の合格者は25名となりました。
当初より合格者は少なくなりましたが、推薦入試で7名合格者が増えたのに対し、一般入試の合格者は3名の減少にとどまりました。
入試結果の分析
神山まるごと高専の入試では、ほかの入試にはない特徴的な内容がいくつかあります。
学校が公表した2023年度入試結果をもとに、その特徴について確認しておきましょう。
神山まるごと高専のホームページも参考にしてください。
推薦入試に提出する推薦書
推薦入試の出願時には、調査書と推薦書を提出することとされています。
この推薦書は、学校関係者が作成するだけでなく、学校関係者以外の人が作成したものを提出してもいいこととされました。
推薦入試を受験した人の半数強は学校関係者である担任の教師や学校長が記載した推薦書を提出しました。
その一方で、半数弱の人は学校関係者以外の人に推薦書を書いてもらっています。
塾やプログラミングスクールの講師だけでなく、知人や友人、親戚など身近な人に推薦書を書いてもらっているケースもあります。
推薦書のポイントは、学校が受験生に対して事前に開示したアドミッションポリシーとマッチしているかです。
推薦書は中学校から直接送付されるのではなく、いったん本人に渡してもらい、本人が確認したうえで送付することとされています。
推薦書を依頼すること、そしてその推薦書を自身の判断で出願することも、すべて推薦入試を受験しようと考えた生徒の責任とされています。
推薦入試・一般入試に提出する課題レポート
推薦入試と一般入試の双方について、出願時に課題レポートを提出することとされています。
推薦入試の課題レポート
一般入試の課題レポート
課題レポートの内容は、上記のそれぞれのリンクから確認してください。
推薦入試については90秒の動画、800字以内の作文、そしてA4用紙1枚の写真や図、絵などの3つの課題が出されました。
一般入試の場合は、90秒の動画と800字以内の作文が課題とされます。
これらの課題は、これまでのほかの入試では出されないような課題であり、はじめて取り組む受験生も多かったのではないかと思われます。
評価のポイントとしては、単に作品の完成度やアイデアの独自性だけでなく、論理性や情報収集、アイデアの実現性など、より実践的な内容が求められています。
ワークショップ
推薦入試、一般入試ともに、ワークショップと題されたモノづくりが行われました。
推薦入試については「『春夏秋冬』をテーマに模造紙上にグループで作品をつくり3分でプレゼンテーションしてください。」という課題が出されました。
まや、一般入試では「動物が登場する4コマ漫画を立体版でつくり3分でプレゼンテーションしてください。」とする課題が出されています。
ワークショップは数名のグループで実施する課題です。
そのため、1人だけでアイデアを出し、作品を作っても評価されません。
新しい入試の方法ですが、これこそが神山まるごと高専という新しい学校を象徴するものといえるのかもしれません。
学力試験
学力試験は一般入試のみで実施されました。
試験科目は国語と数学、そして小論文です。
学校の公表した解説には、「知識を問う問題は少なく、文章や条件をふまえて考えることで答えを導き出す力を問う問題を多く出題しています」(国語)、「複数領域の知識を要する問題を設定することで多角的な見方ができることを求めました」(数学)など、従来の入試とは異なる点があることが明らかにされています。
ちなみに、合格者平均点は国語が40点満点で34.36点、数学が60点満点で49.37点、小論文が50点満点で38.66点となっています。
2024年度入試に向けて
神山まるごと高専の第2期生となる2024年度入試以降の試験で、神山まるごと高専を目指す生徒は、どのようなことに取り組むといいのでしょうか。
普段の生活でできること、そして入試にあたってできることに何があるのか、考えてみました。
やらされる勉強ではなく自ら進んで勉強ができるか
神山まるごと高専は、自分の意見を伝えられる人、あるいは必要な学習を続ける意欲があり、学んだことを活かせる人を強く求めています。
また、そのような人でなければ、この学校で5年間の勉強を続けることはできないでしょう。
中学校の勉強の中でも、自身の意思で勉強に取り組む、そして勉強したことを何らかの形で活かすという考えが重要といえそうです。
高専という選択肢を忘れないようにする
中学3年生になると、途端に入試を意識させられる生活に入ります。
この時、進学を希望する生徒の進路として全日制・定時制・通信制の公立・私立高校や専修学校などの選択肢が示されます。
ただ、高専という選択肢を選択する生徒は非常に少なく、学校や担任の先生からも特に説明を受けないことが多いでしょう。
高専の魅力を感じている人は、そのような周りの雰囲気に流されず、自分の意志で高専を選択するようにしましょう。
出願時期が非常に速いことに注意
神山まるごと高専への進学を考える場合、まずは推薦入試の受験を検討することになります。
神山まるごと高専の推薦入試の出願時期は、2023年度入試の場合、2022年11月1日〜10日と非常に早い時期となっていました。
また、一般入試の出願も2022年12月1日〜15日となっており、高校入試はもちろん、ほかの高専と比較しても非常に早い時期に出願期間が設けられています。
都道府県や中学校にもよりますが、11月や12月では、まだほかの学校の出願は始まっておらず、志望校もはっきり決めていないということもあり得ます。
神山まるごと高専への進学を希望する人は、ほかの生徒のスケジュールに関係なく、その出願の意思を学校に伝える必要がありそうです。
神山まるごと高専は魅力ある学校としてのスタートが切れた
神山まるごと高専の2023年度推薦入試では12.3倍、一般入試では6.6倍の受験者を集めました。
この結果だけ見れば、神山まるごと高専は非常に注目を集めている学校だということが分かります。
ただ、学校としての真価が問われるのはこれからです。
神山まるごと高専への進学を希望する方は、早めに入試対策をしておくのもいいかもしれませんが、学校のことをさらに深く知れるよう、ホームページやSNSなどで情報収集をしておくといいでしょう。
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