高専から大学に進む際の大学編入学とはどのようなものか?

高専卒業後の進路

高専への進学を考えている中学生、あるいはその親御さんの中には、高専を卒業した後は大学に進学したい(させたい)と考えている方もいるでしょう。
高専を卒業して大学に進学する際は、高校から進学する際の大学受験とはまったく異なる大学編入学試験を受けなければなりません。
しかし、大学編入学試験がどのようなものか、広く知られているわけではありません。
高専から大学に進学する際の編入学試験とはどのようなものか、解説していきます。

高専から大学に進学する際は編入学試験を受ける

一般的に大学に入学したい人は、高校を卒業した人あるいは卒業見込の人が大学入学試験を受験します。
これに対して、高専から大学に進学する場合、大学編入学試験を受験するのが普通です。

高校生や高校の卒業生が受験する大学入試は、選抜方法によって「総合型選抜」「学校推薦型選抜」「一般選抜」などと呼ばれます。
これらの入試は、推薦入試や一般入試といった方式の違いはありますが、一般的にイメージされる大学入試のことです。
このページでは特に断りのない限り、一般選抜による大学入学試験のことを「大学入試」とします。

編入学試験と通常の大学入試は違う

大学の編入学試験と一般的にイメージされる大学入試とはまったく別物です。
編入学試験とはどのようなもので、それは大学入試とはどのように違うのか、その違いを確認していきましょう。

編入学試験を実施しない大学・学部もある

まずはじめに、大学の編入学試験はどの大学でも実施されているものではありません。
大学として編入学試験を一切実施していない学校も、かなりの数があります。

また、多くの学部を擁する大学の場合、一部の学部で編入学試験を実施していても、そのほかの学部では編入学試験を実施していないこともあります。
さらに、年度によって編入学試験を実施したりしなかったりする可能性もあります。
そのため、編入学したいと思っている大学・学部に入る機会さえ得られない可能性もあります。

高専から大学に入る際は、基本的に編入学試験を受験することとなります。
そのため、編入学試験を実施していない大学・学部へ高専から進学するのはかなり難しいのです。

大学入学共通テストのような試験はない

国立大学の大学入試を受験する際には、どの学校を受験するかにかかわらず、大学入学共通テストを受験しなければなりません。
そのため、大学入学共通テストの受験のための勉強をし、さらに大学別に実施される試験の勉強もする必要があります。

一方、大学の編入学試験では学校ごとの試験のみが実施され、大学入学共通テストのような各学校共通のテストはありません。
試験を何度も受けなくてもよいので、その分勉強量や時間、金銭面などの負担は軽減されます。

国立大学も複数受験できる

国立大学の大学入試の場合、学校ごとに実施される個別の試験は共通の日程で実施されます。
そのため、複数の国立大学を同時に受験することは基本的にできません。

これに対して、大学の編入学試験は大学が日程を自由に決めるので、日程がかぶらなければ国立大学であっても何校も受験できます。
参考までに、明石高専の「令和6年度学校要覧」より、専攻科への進学状況及び大学(3年次)への編入学状況をご覧いただきましょう。

明石高専「令和6年度学校要覧」専攻科への進学状況及び大学(3年次)への編入学状況

こちらをご覧いただいたのは、明石高専の卒業者のうち進学を希望した人について、専攻科や大学に進学した人と合格した人の両方の人数が分かるからです。
より分かりやすいよう、令和5年度の進学者と合格者の人数を抜粋してご紹介します。

学校名進学者数合格者数
明石高専専攻科2121
北海道大学01
北見工業大学11
東北大学45
筑波大学11
埼玉大学13
千葉大学22
東京大学33
東京工業大学11
東京農工大学13
東京海洋大学11
横浜国立大学36
新潟大学11
長岡技術科学大学33
福井大学11
山梨大学01
信州大学22
岐阜大学11
名古屋大学01
豊橋技術科学大学712
三重大学01
京都大学11
京都工芸繊維大学22
大阪大学68
神戸大学1216
奈良女子大学34
和歌山大学27
岡山大学39
広島大学12
山口大学12
香川大学12
九州大学33
熊本大学22
宮崎大学11
琉球大学22
東京都立大学13
愛知県立大学11
滋賀県立大学01
大阪公立大学01
75117
明石高専 令和5年度 専攻科および大学への進学者数と合格者数

合格者数に対して、進学者数の方が少ない大学が多くあるのが分かります。
これらの大学については、合格したものの進学を辞退した学生がいるということになります。
北海道大学や東北大学、名古屋大学、大阪大学、神戸大学などにも、合格した者の進学しなかった学生がいることとなります。

複数の大学に合格した場合は、合格した大学の中から行きたい大学を選んで進学することができます。
ただ、推薦入試の場合は、受かればその大学に進学することを前提としているので、複数受験できることにはならないので注意が必要です。

受験科目はごくわずか

国立大学の大学入試の場合、大学入学共通テストを受験する必要があります。
大学入学共通テストは、大学個別の試験より幅広い範囲を勉強しなければならず、多くの大学では6教科8科目が出題範囲となります。
そのため、理系の学部を受験する場合であっても、国語や社会(地理歴史・公民)などを勉強しなければなりません。

一方、大学の編入学試験では、学力試験が実施される場合でもその受験科目は限定されます。
一例として、数学のみ筆記試験が実施され、英語についてはTOEICの成績を利用する(北見工業大学など)というケースがあります。
中には、学力試験であっても筆記試験は実施されず、高専から提出された書類だけで合否を判定する学校や学部もあります。
もちろん、大学の編入学試験の方が大学入試に比べて楽というわけではありませんが、受験に必要な科目が限定される分、高専での勉強や研究に打ち込むことができます。

高専からの大学編入は推薦入試により進学する人もいる

大学編入学試験は大学入試と様々な面で違いがありますが、試験の方式でも大きな違いがあります。
高専から大学編入学試験を受けて進学する場合、推薦入試による合格者がかなり多いということです。

ここでは、鈴鹿高専の進学者の合格状況の表をご覧いただきましょう。

鈴鹿高専 令和4年度~令和6年度 学科卒業生 大学別編入学等合格状況

この表を見ると、専攻科や大学に合格した学生が、推薦入試か学力試験のいずれで合格したのかが分かります。
令和6年度の場合、高専専攻科に推薦入試で合格したのが16人、大学に推薦入試で合格したのが19人となっています。
一方、高専専攻科に学力試験で合格したのは33人、大学に推薦入試で合格したのが95人となっています。
人数としては学力試験で合格した学生の方が多いのですが、高専専攻科については3分の1、大学については6分の1が推薦入試で合格していることとなります。

推薦入試の受験資格は学力試験より範囲が限定されていることが多く、高専の卒業者だけとしている大学もかなりあります。
大学への編入学を目指す高専生は、まずは推薦入試による進学を目指すこととなります。

国立高専から大学に編入学する場合、進学先は圧倒的に国立大学が多い

国立高専から大学に編入学する場合、その進学先としては圧倒的に国立大学が多くなっています。
国立高専には国立大学に進学させる実績やノウハウがあります。
また国立大学側でも高専生を受け入れる土壌があり、実際に受験資格などを考えると高専生は大学編入しやすいといえるでしょう。

とはいえ、大学編入学試験では高専生どうしがライバルになるため、人気の大学では厳しい試験になることに変わりはありません。



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