高専→大学編入の道 ②難関10大学への進学の実態

高専卒業後の進路

高専を卒業した学生のおよそ半数は就職し、残りの半数は進学しています。
高専からの進学先として人数が多いのは高専の専攻科、そして豊橋と長岡にある技術科学大学です。
ただ、これ以外の大学にも多くの卒業生が進学しており、大半の学生は国立大学への編入学を目指しています。

中でも難関10大学と呼ばれる大学は、教育が充実し研究のレベルが高く、社会的な評価も得ていることから人気となっています。
しかし、一般的なイメージでは、高専から編入学するのは極めて難しいと考えられているはずです。
そこで、実際に高専から難関10大学にどれくらいの学生が編入学をはたしているのか、その実績を確認していきます。

難関10大学とは

最初に、難関10大学とはどのような大学なのかをご紹介します。

難関10大学とは、具体的には以下の10校の大学を指します。

日本全国に多くの大学があります。
それらの大学を分類する時に、大きく国立大学、公立大学、私立大学といった分け方もできますが、一口に国立大学といってもそれぞれの大学では大きな違いがあります。
そこで、旧帝国大学として設立された7つの大学、そしてそれらの大学に入学偏差値や就職実績で引けをとらない(むしろ入学が難しく実績が高いケースもある)3つの大学を加えた10の大学が、難関10大学として分類されるようになりました。

  • 旧帝国大学
    • 北海道大学
    • 東北大学
    • 東京大学
    • 名古屋大学
    • 京都大学
    • 大阪大学
    • 九州大学
  • その他
    • 東京工業大学
    • 一橋大学
    • 神戸大学

この10大学の中でも、ほとんどの学部・学科では東京大学や京都大学の入学偏差値が飛び抜けて高くなっています。
しかし、この10校は各地域にほぼまんべんなく存在しており、関東や関西の受験生だけが有利になるわけではないため、高校における大学進学の実績を全国的に比較するときに利用されます。

なお、高専から大学に編入するときには、高校から大学を受験する場合のように、入学偏差値を参考にして進学先を選ぶわけではありません。
ただ、これらの10校は知名度が高く、充実した施設を有しており、様々な分野で活躍するOB・OGが数多くいることから、高専からの編入を考える際にはぜひとも進学先として考慮しておきたい学校となっています。

難関10大学への編入実績(令和4年度卒業生)

この記事では、高専から難関10大学への編入実績を確認していきます。

国立高専からの編入者の総数

最初に、高専機構が公表している「国立高専機構 概要」から、大学別の編入学者数を確認していきましょう。
高専機構では、すべての国立高専から大学に編入した卒業生の編入者数を集計しています。
ただし、「国立高専機構 概要」では、すべての大学の編入者数を公表しているわけではなく、上位の大学についてのみ公表しています。
そこで「国立高専機構 概要」から令和4年度卒業生の難関10大学への編入者数をご紹介します。

大学名人数
九州大学63
大阪大学42
東北大学35
神戸大学32
東京工業大学30
名古屋大学28
北海道大学27
東京大学19

難関10大学として紹介した大学のうち、高専機構の資料で進学者数が確認できるのは、上記8大学です。
ここに名前のあがっていない大学は一橋大学と京都大学の2校となります。

このうち一橋大学は、第3年次あるいは第2年次への編入学試験を実施していません。
そのため、文系学部しかないこと以前に、そもそも編入することができません。

一方、京都大学は理系学部も充実しており、高専からでも編入学を目指すことのできる学校です。
ただ、東京大学と並ぶ難関であること、そして関西には大阪大学や神戸大学があることから、これらの大学に人数が分散すると考えられることもあり、高専機構のランキングには登場していません。
ただ、京都大学に編入している高専生は少なからずいるので、高専ごとのデータでさらに確認していきましょう。

高専ごとの編入実績

各高専が公表している学校要覧などの出版物から、難関10大学にどれだけの学生が編入学をはたしているかを確認しましょう。
高専によって、卒業生全体の人数を公表している場合もあれば、学科やコースごとの人数を公表している場合もあります。
また、学校要覧などでは詳細な学校名が公表されていないこともあります。

ここでは、令和4年度卒業生に関するデータの中から、卒業生に占める難関10大学への進学者数が10%を上回る高専・学科をご紹介します。

学校名学科・コース名難関10大学への進学者卒業生に占める割合
小山高専物質工学科410.81%
富山高専物質化学工学科412.12%
岐阜高専電気情報工学科410.53%
岐阜高専電子制御工学科513.89%
豊田高専電気・電子システム工学科716.28%
明石高専機械工学科1127.50%
明石高専電気情報工学科1333.33%
明石高専都市システム工学科717.50%
明石高専建築学科512.20%
北九州高専生産デザイン工学科電気電子コース410.26%

進学者数の多い高専・学科について、詳しく確認していきましょう。

小山高専物質工学科

卒業生進学者うち難関10大学
3724名古屋大学2
北海道大学1
東京工業大学1

令和4年度の卒業生は37人でした。
卒業後の進路は、就職が12人、進学が24人、その他1人となっています。
進学した24人のうち、名古屋大学が2人、北海道大学と東京工業大学がそれぞれ1人となっています。

富山高専物質化学工学科

卒業生進学者うち難関10大学
3315東京工業大学2
名古屋大学1
京都大学1

令和4年度の卒業生は33人でした。
卒業後の進路は、就職が18人、進学が15人となっています。
進学した15人のうち、東京工業大学が2人、名古屋大学と京都大学がそれぞれ1人となっています。

岐阜高専電気情報工学科

卒業生進学者うち難関10大学
3816北海道大学1
名古屋大学1
神戸大学1
九州大学1

令和4年度の卒業生は38人でした。
卒業後の進路は、就職が20人、進学が16人、その他が2人となっています。
進学した16人のうち、北海道大学、名古屋大学、神戸大学、九州大学がそれぞれ1人となっています。

岐阜高専電子制御工学科

卒業生進学者うち難関10大学
3622名古屋大学2
北海道大学1
神戸大学1
九州大学1

令和4年度の卒業生は36人でした。
卒業後の進路は、就職が13人、進学が22人、その他が1人となっています。
進学した13人のうち、名古屋大学が2人、北海道大学、神戸大学、九州大学がそれぞれ1人となっています。

豊田高専電気・電子システム工学科

卒業生進学者うち難関10大学
4332大阪大学3
東北大学1
東京大学1
京都大学1
神戸大学1

令和4年度の卒業生は43人でした。
卒業後の進路は、就職が10人、進学が32人、その他が1人となっています。
進学した32人のうち、大阪大学が3人、東北大学、東京大学、京都大学、神戸大学がそれぞれ1人となっています。

明石高専機械工学科

卒業生進学者うち難関10大学
4026東京大学4
神戸大学4
大阪大学2
東京工業大学1

令和4年度の卒業生は40人でした。
卒業後の進路は、就職が12人、進学が26人、その他が2人となっています。
進学した26人のうち、東京大学と神戸大学がそれぞれ4人、大阪大学が2人、東京工業大学が1人となっています。

明石高専電気情報工学科

卒業生進学者うち難関10大学
3928大阪大学7
東京工業大学2
神戸大学2
東北大学1
九州大学1

令和4年度の卒業生は39人でした。
卒業後の進路は、就職が6人、進学が28人、その他が5人となっています。
進学した28人のうち、大阪大学が7人、東京工業大学と神戸大学がそれぞれ2人、東北大学と九州大学がそれぞれ1人となっています。

明石高専都市システム工学科

卒業生進学者うち難関10大学
4026東北大学2
東京大学2
神戸大学2
大阪大学1

令和4年度の卒業生は40人でした。
卒業後の進路は、就職が13人、進学が26人、その他が1人となっています。
進学した26人のうち、東北大学、東京大学、神戸大学がそれぞれ2人、大阪大学が1人となっています。

明石高専建築学科

卒業生進学者うち難関10大学
4128九州大学3
東北大学1
神戸大学1

令和4年度の卒業生は41人でした。
卒業後の進路は、就職が13人、進学が28人となっています。
進学した28人のうち、九州大学が3人、東北大学と神戸大学がそれぞれ1人となっています。

北九州高専生産デザイン工学科電気電子コース

卒業生進学者うち難関10大学
3916九州大学3
名古屋大学1

令和4年度の卒業生は39人でした。
卒業後の進路は、就職が23人、進学が16人となっています。
進学した16人のうち、九州大学が3人、名古屋大学が1人となっています。

高専から難関10大学への進学は現実的な進路

高専から難関10大学に進学する学生は、大学の編入学試験を受験しなければなりません。
どのような選考が行われるのか、どれくらいの募集定員があるのかは、今後別の機会にご紹介する予定です。

編入学試験は難しい試験ですが、受験できる学校数に決まりはありません。
日程が重ならなければ何校も受験することができるので、難関10大学のような学校を目指すのも、高専に進学する意義といえそうです。

ただ、高専に進学するほとんどの人は「東大や京大に行きたいから高専に行く」わけではありません。
本当に東大や京大に行きたいのであれば、進学校と呼ばれる高校に進むのが王道だからです。
高専では高校ではできない専門知識についての勉強をし、その興味関心を早い段階から深めることができます。
そして、高専での勉強や研究を活かすため、高専を卒業した後に就職する人もいれば、進学する人もいるのです。

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