これまでずっと様々な高専に関する情報をお伝えしてきましたが、ここで少し方向転換し、大学とも高専とも違う第三の選択肢として、大学校の魅力をお伝えしたいと思います。
その中でも、高専の志願者と親和性が高いと考えられる「気象大学校」をご紹介します。
大学校とはどのような学校なのでしょうか、そして気象大学校にはどのような特徴があるのでしょうか。
高専の志望者でも、将来の進路を考えると気象大学校が魅力的に感じられる方もいるかもしれません。
基本情報
気象大学校とはどのような学校か、その基本情報を確認しておきましょう。
| 正式名称 | 気象大学校 |
| 所管省庁 | 国土交通省気象庁 |
| 所在地 | 千葉県柏市旭町七丁目4番81号 |
| ホームページ | https://www.mc-jma.go.jp/ |
| 学生の定員 | 1学年15名、合計60名 |
| 取得できる学位 | 学士(理学) |
気象大学校は、気象庁の教育・研修機関として設置された教育機関です。
歴史については後ほどご紹介しますが、長年にわたって、気象業務に関わる専門家を育成してきました。
気象大学校は千葉県柏市に所在しており、最寄駅はJR常磐線と東武野田線の柏駅です。
柏駅西口から1.2キロの距離にあり、歩いて15分ほどで行くことができます。
気象大学校の知名度があまり高くない要因と考えられるのが、定員の少なさです。
1学年あたりの定員は15人であり、4年制の学校全体でもわずか60人となります。
これはどのような小規模の大学よりもさらに少ないと考えられるので、その存在すら知らないという人が大半なのです。
気象大学校では、文部科学省の大学設置基準に準じて教育や実習が行われています。
そのため、気象大学校を卒業すると学士(理学)の学位を取得することができます。
気象大学校の歴史
気象大学校の前身にあたるのは、中央気象台附属測候技術官養成所です。
この養成所は1922年9月に設置され、同年10月には千代田区大手町で授業が開始されました。
開設や授業の開始が急がれたのは、地方の技術系職員が技師に昇進するために必須だった高等専門学校が気象の分野にはなく、昇進が滞ってしまう可能性があったこと、また優秀な人材の確保が疎外されてしまう可能性があったことが要因とされています。
1924年に養成所から高等専門学校となり、技師への昇進のための教育機関を作るという当初の目的は早くも達成できたこととなります。
1939年には中央気象台附属気象技術官養成所と名称を変更、1943年には現在の気象大学校の所在地に移転します。
戦後の1951年、気象技術官養成所を廃止し中央気象台研修所となりますが、1956年には中央気象台が気象庁となったのにあわせ、気象庁研修所に改称します。
1962年にはさらに気象大学校に改称し、2年制の大学部が設置されます。
1964年に大学部が4年制となり、現在につながる気象大学校の形となりました。
卒業生に対して学士の学位が授与されるようになったのは1992年からです。
気象大学校で学べること
気象大学校では文字どおり、気象に関することを学ぶことができます。
ただ、気象大学校は気象業務に従事し、気象庁の中核となる職員を養成するのが目的であることから、単に気象に関することだけでなく、自身や防災に関することもカリキュラムに組み込まれています。
また、情報リテラシーやコミュニケーション演習といった、いかにも気象の学校らしい授業もあります。

気象大学校での学生生活
気象大学校に入学した学生は、同時に国土交通省の職員でもあります。
そのため、気象大学校の学生生活は普通の大学とは違うのではないかと考える方もいるのではないでしょうか。
しかし実際のところ、気象大学校の学生生活は他の大学と大きな違いはありません。
平日は授業や実験などが行われますが、サークルや同好会などの活動も行われます。
ほかの大学校(防衛大学校など)のような制服もなく、学生はみな私服で学校生活を送っています。
国家公務員という身分ではありますが、そのように感じる場面はほとんどないはずです。
一方で、気象大学校が他の大学と大きく違う点もあります。
- 原則として全寮制
気象大学校の敷地内には、「智明寮」と呼ばれる寄宿舎があります。
原則として、気象大学校に入学したすべての学生は、この寮に入寮することとなっています。
普段授業を受ける校舎からは徒歩1分の距離という、非常に便利な場所にあります。
寮費は無料となっており、学生にとっても親にとってもうれしい設備です。
- 給料が支給される
普通の大学との最も大きな違いは、学生が国家公務員としての身分を有しているということです。
大学校への入学試験も、「気象大学校学生採用試験」として実施されます。
ちなみに気象大学校の学生は、毎月約17万円の給料が支給されるほか、年2回のボーナス(正確には期末勤勉手当)も支給されます。
気象大学校卒業後の進路
気象大学校の学生は気象庁の職員なので、卒業に際して就職活動をすることはありません。
卒業後の多くは気象庁の各地方気象台に配属され、勤務することとなります。
その後は本庁や管区気象台での勤務をして、ステップアップしていきます。
また、世界気象機関(WMO) や南極観測隊、他の省庁や地方自治体に出向して、それぞれの分野で活躍することもできます。
人事院の制度を利用して、大学院で研究を深めたり、海外への留学をすることもできます。
気象大学校の難易度
気象大学校の入学試験(採用試験)は1次試験、2次試験の2回に分けて実施されます。
1次試験は2日間にわたり、学科試験(基礎能力・数学・物理・英語)と作文となっています。
2次試験は面接と身体検査となっています。
あまり知られていませんが、気象大学校はかなりの難関とされています。
例えば河合塾の大学入試情報サイト「Kei-Net」(https://www.keinet.ne.jp/)によれば、気象大学校の偏差値(合否可能性50%)は67.5です。
この数値は、同じ理学系の大学でみると京都大学理学部と同一であり、東北大学や大阪大学などの旧帝国大学の理学部より高くなっています。
医学系の大学でみても、北海道大学、東北大学、名古屋大学、九州大学の医学部など、旧帝国大学の医学部と同じです。
気象大学校に入学したいという方は、かなりの覚悟を持って試験に臨む必要がありそうです。
どんな人が気象大学校に向いている?
気象大学校に入学するということは、そのまま気象庁の職員になることを意味します。
大学入試ように自分の興味のある分野や行きたい学校から選ぶというより、この先気象に携わる仕事を続けていくことがイメージできるかどうかが大事です。
まずは気象や地球のこと、宇宙のことなどに興味があるかどうかがポイントになるでしょう。
また、入学試験はかなりの難関なので、地道に努力できるかどうかが成功へのカギとなりそうです。



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