2023年12月現在、日本各地にあわせて58の高専が存在しています。
この多くが国立の工業高専ですが、公立・私立の工業高専や国立の商船高専もあります。
一見すると多くの高専があるように見えますが、実際は高専の学校数は大学と比較してもかなり少なくなっています。
ちなみに、2023年度に存在した大学の数は、旺文社教育情報センターの調べによれば、全部で793校とされています。
これに対して高専の数は少なく、また1校あたりの学生数も大学と比較すると大幅に少ない人数となっています。
すべての学生数を考えると、高専に在籍する学生の数は少なく、存在意義が問われるようにも思われますが、はたして高専で学ぶ意味は何なのでしょうか。
高校や大学に進む人が大半な中で、高専に進学するとどのような違いがあるのか考えてみましょう。
高校ではなく高専に進学する意味
高専に進学する学生の多くは、中学校を卒業するタイミングで入試を受けて入学してきます。
そのため、高専に進学してくる学生のほとんどは、高校に進学していません。
高校に進学せず、中学校を卒業した後すぐに高専に進むと、早い段階から自身の興味のある分野の教育を受けられます。
特に大学から専門的な教育を受ける場合と比較すると、高専に進んだ人は3年早く、受験勉強ではない専門的な勉強を始められます。
専門学科を擁する高校との違い
高校の中には、工業高校や商業高校に代表される専門的な学習ができる学校があります。
このうち工業高校には、機械や電気、建築、情報など高専と同じような学科が設置されており、高専と同じような勉強ができると考えるかもしれません。
しかし、工業高校は大学への進学を考えた時に有利とは言えないため、大学進学を希望する生徒からは選ばれにくい傾向にあります。
より高度な専門教育を受けようと考えており、さらに大学進学も視野に入れている場合、工業高校ではなく高専に進学するべきといえます。
一般企業に就職する場合、高校卒と高専卒(あるいは大学卒)では任される業務が異なるため、将来を考えてどのような道に進みたいか、じっくりと考える必要があるでしょう。
普通科などの高校との違い
高校の中には、専門学科ではなく普通科や理数科などの学科を設置する学校があります。
普通科などの高校では、高校のカリキュラムの中で専門的な分野をより深く学ぶのは難しいでしょう。
これは、普通科などの高校を卒業した後、卒業生は様々な進路に進むため、高校での学習内容は受験勉強などへの対応を第一目的としているためです。
これらの高校とは違い、高専では専門的な勉強をしながら、将来的な大学進学も可能となっています。
もちろん、大学に進学しなくてもその評価は十分に高いといえます。
高専を卒業した後の就職率などは、社会からの評価の高さを物語っています。
大学ではなく高専に進学する意味
高専に進学した人の多くは、高専での5年の課程を終えると、企業に就職します。
そもそも高専は、高校の代わりに行くところではなく、大学と同じような専門的な教育を受けるところだからです。
そこで、大学に進学しないで高専に進学することにはどのような意味があるのか、考えてみます。
大学に進学する時の注意点
高等教育機関での教育を受けるため、多くの人は大学に進学します。
学校にもよりますが、規模の大きな大学の場合、一学年あたりの人数は数百人〜千人以上となります。
クラス分けが行われるなど、大学としても学生をほったらかしにしないような工夫は行われています。
ただ、大学が学生の面倒を見るのにも限界があるため、どうしても大学に来なくなってしまう、あるいは単位を落としてしまうといった学生が一定数存在します。
これは偏差値が高いといわれる大学でも起こる現象であり、大学・学生の質やレベルとは無関係です。
また、大学を卒業した学生がどのような学生生活を送ってきたのかは、人によって大きく異なります。
しかし第三者から見た場合、その人がどのような学生生活を送ってきたのか、詳しくは分かりません。
そのため、企業の採用担当者などからすれば、大学を卒業した学生は玉石混交といった状態であり、その見極めには慎重になります。
大学に進学したからといってすべての人が高い評価を得られるわけではありません。
また大学での時間の使い方によっては、自ら評価を下げてしまう可能性もあります。
高専は学校や先生のフォローが手厚いイメージ
一方、高専は一学科あるいはコースあたりの人数は40人程度とされ、卒業まで少人数教育が続きます。
少人数教育を受けるのは決して楽ではなく、プレッシャーに感じる場面もあるかもしれません。
しかし、卒業まで面倒見が良いのが高専の特徴であり、それが企業などからの高い評価につながっています。
もちろん、少人数教育だからといってすべての学生がスムーズに卒業できるわけではありません。
中には勉強についていけない人や、勉強への興味を持てずに退学してしまう人もいます。
ただそれでも、大学よりフォローしてもらえる可能性は高いので、高専での時間が無駄にはならないでしょう。
高専から大学に進学するメリット
中学校を卒業する時点で、将来的な人生設計を細かく決めている人は少ないと思います。
ただし漠然と「大学に行きたい」といった考えを持っている方はいるでしょう。
将来的に大学に進みたいと考える人にとって、高専から大学に進むメリットはあるのでしょうか。
高専の勉強は大学の受験対策ではない
高校からではなく高専から大学に進学すると、一般的な大学入試を受ける必要はありません。
大学入試を受けるには、高校での学習が必要不可欠ですが、それだけでは足りず、塾に通ったりオンラインでの受験勉強を行うケースが多くなります。
当然そのためには多くのお金と時間を費やし、生徒自身はもちろんですが、送り迎えなども含めた保護者の負担も大きくなります。
一方、高専では受験勉強を意識する必要はありません。
自分の興味のある分野の勉強をして社会に出るための研鑽を積むと同時に、大学への編入も選択肢に入れることができ、自身の可能性を広げられます。
学校での順位や偏差値といった物差しで計るのではなく、本当に自分が何に興味があるのか、そして将来どのような道に進みたいのかを考えながら、有意義な時間を過ごせるでしょう。
大学の編入試験は一般的な大学入試とは違う
また、高専から大学に進む際に受ける編入試験は、何度でも受けられるという特徴があります。
高校から国公立大学に進学を目指す際に受験する一般入試では、通常は大学共通テストと大学での二次試験を受験します。
大学共通テストも二次試験もそれぞれ共通の日程で実施されるため、基本的に複数の大学を受験できません。
しかし、大学の編入試験は大学が独自に実施する試験であり、日程もバラバラです。
そのため複数の大学を受験して、合格した大学の中からより希望順位の高い大学に進学できます。
なお、編入試験は大学入試とは違う難しさがあるため、編入試験の方が難易度が低いわけではありません。
ただ、最後まで進学先を決めかねている人にとって、複数の大学の編入試験を受けられるのはマイナスにはならないはずです。
高専に進学する際の注意点
高専に進学した場合、難しくなることがいくつかあるのでご紹介します。
高専を中退して大学の一般入試に合格するのは至難の業
高専に入学した後、3年で中退し大学入試を受けるのは不可能ではありません。
ただ、高専で行われる教育内容は一般的な高校で行われるものとはまったく異なるため、高専を3年で辞めて大学の一般入試を受験しても、合格はきわめて難しいでしょう。
高専から大学の一般入試を受験して大学に入る人は、現実的にはほとんどいないと知っておく必要があります。
それでは推薦入試はどうかと考える方もいるでしょうが、高専3年生を修了した人は推薦入試の受験資格がない大学も多くなっています。
そのため、高専から大学に進むのはかなり限定的なルートであると考えておきましょう。
高専での進路を決めたら変えるのはほぼ不可能
また、高専で進学する学科やコースを決定したら、その後には簡単に変更できない点も注意が必要です。
中学校を卒業した後、高校に進学しさらに大学を受験するのであれば、どの高校を受験するのか、そしてどの大学を受験するのか、少なくとも2回は自身の進路を考える機会があります。
これに対して高専に進学する人の場合、どの高専のどの学科を受験するのかを決めると、その学科を専門的に学ぶ以外の選択肢はなくなります。
どうしても変更したければ、もう一度入試からやり直さなければなりません。
15歳で今後の人生の進路を決定するような決断をするのは、非常に難しいでしょう。
しかし、どのような道に進む人でもプロフェッショナルになる人は、早くから自身の進む道を決め、努力しています。
中学生のうちに自身の進む道を見つけ、そのための努力ができた人だけが、高専に入学できるのです。
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