長年にわたって高専空白県となっていた滋賀県に、新たな高専を作る計画が持ち上がっています。
以前、滋賀県立高専の誕生について、その所在地などを紹介した記事を掲載しました。
しかし、滋賀県ではこの学校の基本構想をすでにまとめていました。
このサイトでは、滋賀県の作成した基本構想を取り上げたことはなかったので、今回改めてご紹介いたします。
また、新たな高専の誕生は、既存の高専に対して少なからず影響を及ぼすと考えられます。
そこで、滋賀県立高専のイメージとその影響について、確認していきます。
滋賀県立高専の基本情報
あらためて、滋賀県立高専の基本情報をご紹介します。
所在地
滋賀県立高専の所在地は、滋賀県野洲市市三宅です。
JR琵琶湖線(東海道線)野洲駅から1.3㎞、徒歩約17分の場所にあるため、電車を使っての通学にも便利な場所です。
学校の設置場所を検討する段階では、他にいくつかの候補地がありましたが、まとまった用地の確保とアクセスの良さでこの場所が選定されました。
開校時期
現時点で予定されている開校時期は、2028(令和10)年4月です。
中学校を卒業した後、16歳になる年度に高専に入学してくると考えると、2024年3月に小学5年生を終え、2024年4月から小学6年生になる子供が滋賀県立高専の第1期生になります。
まだかなり先のことのようにも思えますが、高専に入学するには、中学1年生からの調査書・内申点が合否に影響することもあります。
そのため、絶対に高専に行きたいという人は、早くから準備をしておくことをお勧めします。
滋賀県立高専の学科等の構成
高専が設置されると、その高専でどのような専門教育が受けられるのか、つまりどのような学科が設置されるのか非常に興味深いところです。
設置学科については、まだ正式決定しているわけではありませんが、滋賀県の高専設置準備室が策定した「滋賀県立高等専門学校 基本構想1.0」では、高専のイメージをある程度明らかにしています。
設置される学科
高専では、ごく一部の学校を除いて、理系の学科が設置されます。
ただし、一口に理系と言ってもその分野は多岐にわたるので、どのような学科が設置されるのかは非常に大きな関心事となっています。
「基本構想1.0」では、設置される学科について、「機械系」「電気電子系」「情報技術系」「建設系(環境・インフラ系)」の4つとしています。
久々の国公立高専の新設なので、どのような学科が設置されるのか注目されますが、これまでの高専と同じような学科が設置される流れとなりそうです。
なお、入学時は総合学科として専門的な学科に分けず、2年生からそれぞれのコースに分かれる形になる模様です。
そのため、入学時には一括募集を行うと考えられます。
学生の定員
高専に限らず、学校が新設された時に気になるのが、1学年あたりの学生の定員がどれくらいになるかです。
「基本構想1.0」では、学生の定員は1学年120人としています。
公立高専の場合、入学してくる学生の出身地に一定の条件を設けることがあります。
例えば神戸市立高専の場合、原則として兵庫県内の中学校を卒業している人に限定されます。
滋賀県立高専については、今のところ滋賀県内の中学校出身者に限定するという案は出ていません。
「基本構想1.0」では、県内からの入学者見込を90人、県外からの入学者見込を30人としています。
したがって、滋賀県内の中学生に入学を限定することはなさそうですが、県外からの入学者に一定の上限を設ける可能性はあります。
学生寮
全国に3校ある公立高専の中で、学生寮を設置している学校はありません。
これは公立高専が、地元の学生にとっての受け皿であり、寮を作って全国からの学生を受け入れることを目的とはしていないためです。
一方、「基本構想1.0」では学生寮を設置することを明らかにしています。
これは、通学が難しい遠方からの学生を受け入れるだけでなく、海外からの留学生の存在も意識したものとされています。
寮での生活も、学校生活や教育の一環であることをふまえたものとなっています。
滋賀県立高専開校後の影響予想
滋賀県立高専が開校すると、これまで高専がなかった地域に、まったく新しい高等教育機関が誕生することになります。
今まで高専に行きたくても他県の学校に行くしかなかった滋賀県内の中学生にとっては、新たな選択肢が誕生することとなります。
また滋賀県立高専は、滋賀県内だけでなく京都府や大阪府などからのアクセスも良いため、他府県からの入学者も想定されます。
そこで、滋賀県立高専が誕生すると、周辺地域の中学生や近隣の高専にどのような影響があるか、予想します。
中学生への影響
滋賀県立高専は1学年の定員が120人とされています。
120人という人数は、決して大きな数ではありません。
他の高校と比較すると、むしろ小規模な学校といえるくらいの規模となります。
ただ、高専に進学を目指す偏差値近辺の中学生にとって、新たに120人規模の学校ができることは大きなインパクトがあります。
これまで他の高校に進学していた中学生が高専を選択すれば、他の高校の定員に余裕が生まれます。
すると、既存の高校の人気に変動が生じる可能性は高いといえるでしょう。
また、滋賀県立高専の誕生により滋賀県立の公立高校の定員が調整され、一部の高校の定員が削減される可能性もあります。
近隣の高専への影響
これまで高専がなかった滋賀県の中学生は、高専に進学したいと考える場合、どの高専に進学していたのでしょうか。
高専が作成している「学校要覧」「学校概要」では、学生の出身地が明らかにされている場合があります。
このデータによれば、滋賀県出身者が多く在籍している高専は以下のようになっています。
- 福井高専 52人/982人(本科生のみ)
- 岐阜高専 17人/1053人(本科生のみ)
- 舞鶴高専 128人/775人(本科生のみ)
- 奈良高専 28人/1030人(本科生のみ)
高専の1年生から5年生までの合計人数なので、これらの高専には1学年あたり平均して45人が進学しています。
この他の高専にも進学している可能性はあり、1学年で50人〜60人程度が高専に進学していると予想されます。
なお、「基本構想1.0」では県内からの高専進学者のうち60人程度が滋賀県立高専に進学すると見込んでいます。
つまり、これまで滋賀県内から高専に進学していた学生の大半が、滋賀県立高専に進学すると考えられているのです。
これにより影響を受けるのが、これまで多くの滋賀県出身者が進学していた他の高専です。
特に舞鶴高専は、15%を超える滋賀県出身者が在籍しており、仮にすべての学生が滋賀県立高専に進学するようなことになれば、欠員が出ないかという心配が生じかねません。
もちろん、志願者がいればこれまで不合格となっていた学生が新たに合格者となることになるので、直ちに欠員が生じることはないでしょう。
ただ、舞鶴高専は京都府内にあるといっても、京都市や大阪市などの都市圏から外れており、立地的には滋賀県立高専より不利になります。
そのため学校自体の魅力、あるいは学習内容の充実度を上げる努力が必要不可欠になると考えられます。
滋賀県立高専の情報はホームページで確認しよう
ここまで滋賀県立高専の誕生に向けて、イメージが膨らむようにいろいろな情報をご紹介してきました。
ただ、実際に滋賀県立高専が開校するまではまだ時間がかかり、その間に決めなければならないことも多くありますし、変更になることも出てくるでしょう。
これから高専に行ってロボコンに出たいと思っているような小学生とその親御さんは、滋賀県のホームページから情報をチェックしておくといいでしょう。
なお、令和5年11月には基本構想2.0が滋賀県から公表されています。
詳しい解説記事については後日、改めて掲載致します。
コメント