国立高専への入学を目指す中学生は、高専の入学試験を受験しなければなりません。
多くの中学生にとって、人生で初めての入試となるため、不安を抱えながらの試験となることでしょう。
そこで、国立高専ではどのような入学試験が行われるのかご紹介します。
どれくらいの倍率になるのかといった情報や、推薦入試の選抜方法などもあわせてご紹介していきます。
国立高専の入試の形式
国立高専への進学を目指す場合、入学のタイミングは大きく2つあります。
①中学卒業のタイミングで高専本科生の1年生になるための試験を受ける
②高校3年生の課程を終えるタイミングで高専4年生になるための編入試験を受ける
ただし、②の編入試験は欠員がなければ実施されず、また試験が実施されたとしても定員はごくわずかです。
したがって、国立高専への進学を目指す場合は、①の中学卒業後に入学するための試験を受けるしかないと言っても過言ではありません。
入学試験の種類
中学卒業のタイミングで実施される試験には、大きく分けて「推薦入試」と「学力検査」があります。
高校入試と大きな違いはなく、推薦入試は調査書と面接が実施されるほか、学校によっては作文なども行い合否を判定します。
一方、学力検査は試験当日に会場で実施される学科試験と、調査書で合否が判定されます。
また、推薦入試と学力検査のほかに、帰国子女の特別選抜枠が設けられています。
ただ、こちらは定員があるわけではなく、出願できる人が限られることから、試験自体が実施されない年度もあります。
入学試験の特徴
国立高専の入試で特徴的なのは、推薦入試で多くの定員を確保していること、そして推薦入試で合格にならなかった場合に、そのまま学力検査を受験することです。
実際、推薦入試で合格を得られなかった受験生のほとんどは、その後学力検査を受験し合格を目指します。
例年、推薦入試は1月半ば頃、学力検査は2月半ば頃に実施されます。
また、定員に満たなかった学科がある場合には、その後に二次募集が実施されることもあります。
二次募集は3月に入ってから実施され、実質的に高専進学の最後のチャンスとなります。
出願状況
国立高専への入学希望者の出願状況はどのようになっているのでしょうか。
各学校のホームページには、過年度の志願者や合格者のデータが公表されています。
ただし、学校によって公表されているデータに違いがあるため、ここでは詳細なデータを公表している学校のデータをご紹介します。
仙台高専
学科 | 定員 | 推薦入試定員 | 推薦入試志願者 | 推薦入試合格者 |
総合工学科 Ⅰ類(情報・電子系) | 120 | 50%程度(60) | 76 | 60 |
総合工学科 Ⅱ類(機械・電気・材料系) | 120 | 50%程度(60) | 89 | 60 |
総合工学科 Ⅲ類(建築系) | 40 | 50%程度(20) | 34 | 20 |
学科 | 定員 | 学力検査定員 | 学力検査志願者 | 学力検査合格者 |
総合工学科 Ⅰ類(情報・電子系) | 120 | 50%程度(60) | 85 | 61 |
総合工学科 Ⅱ類(機械・電気・材料系) | 120 | 50%程度(60) | 98 | 63 |
総合工学科 Ⅲ類(建築系) | 40 | 50%程度(20) | 37 | 23 |
富山高専
学科 | 定員 | 推薦入試定員 | 推薦入試志願者 | 推薦入試合格者 |
機械システム工学科 | 40 | 50%程度(20) | 20 | 20 |
電気制御システム工学科 | 40 | 50%程度(20) | 29 | 21 |
物質化学工学科 | 40 | 50%程度(20) | 41 | 23 |
電子情報工学科 | 40 | 50%程度(20) | 34 | 20 |
国際ビジネス学科 | 40 | 50%程度(20) | 73 | 22 |
商船学科 | 40 | 50%程度(20) | 20 | 20 |
学科 | 定員 | 学力検査定員 | 学力検査志願者 | 学力検査合格者 |
機械システム工学科 | 40 | 50%程度(20) | 38 | 23 |
電気制御システム工学科 | 40 | 50%程度(20) | 39 | 21 |
物質化学工学科 | 40 | 50%程度(20) | 50 | 19 |
電子情報工学科 | 40 | 50%程度(20) | 50 | 21 |
国際ビジネス学科 | 40 | 50%程度(20) | 69 | 22 |
商船学科 | 40 | 50%程度(20) | 37 | 21 |
豊田高専
学科 | 定員 | 推薦入試定員 | 推薦入試志願者 | 推薦入試合格者 |
機械工学科 | 40 | 30%程度(12) | 47 | 14 |
電気・電子システム工学科 | 40 | 30%程度(12) | 70 | 13 |
情報工学科 | 40 | 30%程度(12) | 90 | 12 |
環境都市工学科 | 40 | 30%程度(12) | 55 | 13 |
建築学科 | 40 | 30%程度(12) | 61 | 13 |
学科 | 定員 | 学力検査定員 | 学力検査志願者 | 学力検査合格者 |
機械工学科 | 40 | 70%程度(28) | 67 | 28 |
電気・電子システム工学科 | 40 | 70%程度(28) | 86 | 29 |
情報工学科 | 40 | 70%程度(28) | 119 | 30 |
環境都市工学科 | 40 | 70%程度(28) | 68 | 30 |
建築学科 | 40 | 70%程度(28) | 74 | 29 |
学校によって、志願者数や推薦入試の定員、倍率にはバラツキがあります。
ここでご紹介した3校は、いずれも推薦入試で予定どおりの合格者を出していますが、高専の中には、推薦入試の志願者が想定していた定員に満たないケースがあります。
このような場合は、推薦入試での合格者が少なくなり、その分、学力検査での定員が増えることとなります。
ただし、学力検査を実施しても出願者が定員に満たないことがあります。
この場合、第二志望・第三志望まで選択できる制度を実施している学校であれば、第一志望でない受験生からも合格者を出して、定員を満たします。
一方、学力検査の結果定員に満たない場合には、二次募集が実施されることとなります。
推薦入試の選抜方法
国立高専の推薦入試は、中学校の学校長から推薦された生徒が出願できます。
出願資格は各学校ごとに明確に定められており、その資格を満たさない場合は、出願が認められません。
たとえば仙台高専の場合、推薦入試の出願資格は以下のようになっています。
◯基本的な生活習慣ができており、自ら考えて行動し、粘り強く努力する者
◯科学技術に興味・関心があり、将来、国際的に活躍するエンジニアになりたい者
◯教科以外の活動(学生会活動、部活動、その他校内外での諸活動)にも意欲的に取り組む意志のある者
◯調査書の各記録が優良であり、選択科目を除く9教科の3年間の「学習記録」の評定(一律5段階評定)の合計が108以上であること。
この出願資格の中にある「合計が108以上」の部分には下線が引かれ、とりわけ強調されています。
3年間の9教科の評定が合計108以上ということは、平均すると1年あたり36以上(オール4)の評定が必要となります。
仙台高専の場合、3年間の評定の合計が基準として採用されているため、3年生になってから頑張ればいいというわけにはいかないのです。
国立高専の推薦入試の出願資格は学校ごとに定められており、この評定の数字も学校によって違いがあります。
国立高専への進学を考えている人は、まず推薦入試での合格を目指しましょう。
ただし、推薦入試に出願するためには、学校の定める出願条件を満たさなければなりません。
高専がどのようなところか気になり始めたら、その時すぐに学生募集要項を確認しておき、推薦入試の出願の条件を確認しておきましょう。
また、推薦入試の当日に、面接のほか作文を課す学校もあります。
この作文も合否判定の材料として用いられるため、基本的な文章作成についての練習をしておくといいでしょう。
学力検査の形式
学力検査の内容は、基本的にどの学校も試験当日の学力検査の成績と、中学校からの個人調査書の両方を加味して判定されます。
学力検査は、すべての学校でマークシート方式での試験が実施されます。
これは、国立高等専門学校機構が作成する入試問題を、すべての高専で入試問題に利用しているためです。
過去問は「国立高等専門学校機構」ホームページで確認することができます。
ただし、入試問題は同じでも合格判定の基準は学校により違うため、注意が必要です。
・学力検査と個人調査書の比率が異なる
・学力検査のうち数学、理科、英語の配点が倍になる
・学力検査で社会の試験を実施しない
ほかにも様々なパターンがあるため、学校ごとの違いを把握したうえで、より自分に合った学校を探すのもいいかもしれません。
また、入試問題は共通と考えてよく、中学校の課程に沿った出題となっているため、学校の勉強を基礎からしっかり行うことが、成功のカギとなりそうです。
その他の選抜方法
帰国子女の特別選抜をほとんどの高専が実施しており、推薦入試や学力検査とは別に、若干名の募集を行っています。
ただ、この制度に該当する受験者は多くないため、出願資格があるかを事前に確認しておく必要があります。
このほか、学校によっては推薦入試や学力検査とは別の選抜方法を実施しているところがあります。
- 八戸高専(国際的エンジニア育成特別選抜制度)
- 和歌山高専(体験実習入試)
- 鳥羽商船高専(体験学習選抜・商船学科のみ)
このような制度を利用することができれば、高専での学習をより深みのあるものとすることができ、自分を高められるのではないでしょうか。
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