高専の入試で一括募集している学校があるのはなぜか?そのメリットとデメリットも確認しておこう

高専の入試

高専には、1つの学科だけ設置されている学校と、複数の学科が設置されている学校があります。
1つの学科だけ設置されている高専の場合、一括して入学者を募集し、入試が実施されます。
そして入学した学生は、在学中にそれぞれの学生が希望するコースに進学するという形態をとっています。
はじめから学科ごとに入試を実施する高専もある中、このような形で学生を募集する学校があるのはなぜなのでしょうか。
また、一括募集の学校に進学希望する学生は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。

高専が一括募集するのはなぜか?

高専は、従来は専門分野ごとに学科が設置され、その学科ごとに学生を募集し、学科ごとに入学試験の合否を判定していました。
各学科で学習する内容には大きな違いがあるので、その違いを踏まえたうえで自身の希望する学科に出願するのが基本と考えられていたのです。

しかし現在では、高専の1学年の定員を一括して募集し、すべての志願者で合否判定を行う学校が増えています。
一括募集する学校では、入学当初は1つの学科に全員が所属し、より専門的な課程に進む際には、入学後の成績をふまえて進路が決定されます

学生を一括して募集し試験を実施するのは、高専に限らず大学入試でも高校入試でも実施されています。
中でも一番有名なのは、東京大学の入試です。
東京大学の場合、学部ごとに学生を募集するのではなく、理系・文系でそれぞれ3つの類型に分けて学生を募集しています。
その後、3年生に進級する際に、進級する学部を決定するという進路決定方式を採用しています。

高専で一括募集が実施される理由とは

高専で一括募集が行われるのには、高専側の様々な事情があるものと思われます。
中でも重要なポイントは、一括募集の方が定員が充足されやすいということです。
一括募集する前と後で、どのような違いが発生するのか、具体的な例を使って説明しましょう。

ここでは分かりやすい事例として、これまで40人の定員で2つの学科に分けて学生を募集していた高専が、一括して80人の学生を募集する形に変更した場合で検討してみましょう。

学科ごとに募集した場合

A学科の志願者60人、B学科の志願者30人、あわせて90人の志願者がいるとします。
A学科には60人の志願者のうち上位40人が合格するものの、残り20人は不合格となります。
一方、B学科には志願者30人がすべて合格しますが、10人の欠員が生じることとなります。

一括募集の場合

2つの学科を1つに統合し、新たに定員80人のC学科を設置したとします。
また、志願者の総数は以前と変わらず90人とします。
この場合、80人の定員に対して90人の志願者がいるため、上位80人が合格となり10人は不合格となります。
この場合、欠員が生じることはありません。

一括募集で入試結果が分かりやすくなる

この事例を考えても分かるように、高専にとっては、一括募集する方が欠員が生じにくい結果となります。
そのため、定員を充足させたい高専としては、一括募集を採用する方が望ましい結果となるのです。

学科ごとに入試を実施してきた多くの高専では、これまでも様々な工夫を重ねてきました。
例えば、出願時に提出する願書に、第2希望、第3希望を記載する学校があります。
このような学校では、第1希望の学科には合格できなくても、第2希望の学科に合格することがあります。
ただ、第2希望以下での合格であることは本人がよく分かっており、第1希望の学科に進学できなかった学生のモチベーションが維持できないことも考えられます。
第2希望以下での合格者を生まないようにするには、一括募集を行えばいいという結論になります。

一括募集する高専の一覧(令和5年度入試データ)

高専名学科名定員
函館高専生産システム工学科120
苫小牧高専創造工学科200
釧路高専創造工学科160
一関高専未来創造工学科160
仙台高専総合工学科Ⅰ類120、Ⅱ類120
秋田高専創造システム工学科160
鶴岡高専創造工学科160
長野高専工学科200
米子高専総合工学科200
津山高専総合理工学科160
高知高専ソーシャルデザイン工学科160
有明高専創造工学科200
北九州高専生産デザイン工学科200
東京都立産業技術高専ものづくり工学科320
大阪公立大学高専総合工学システム学科160

一括募集する高専を志望するメリット

一括募集を実施している高専を志望することで、合格可能性が上昇するわけではありません。
ただ、これまで第1志望の受験生だけでは欠員が生じていた学校の場合、一括募集になることで合格に近づく受験生もいます。

また、高専に行きたいと考えるものの、具体的に何を勉強したいのか分からない中学生にとって、入学後にコースに分かれる高専に進学することは、実際に専門的な内容に触れた後に進路を決められるというメリットがあります。

一括募集する高専を志望するデメリット

一括募集を実施している高専に進学すると、より専門的なコースに分かれる際は、入試の結果ではなく高専入学後の成績が大きく影響します。
そのため、高専に入学しても、自身の希望する専門分野のコースに進学できる保障はありません

これから一括募集になる高専が増える可能性も。入試情報は早めにチェックしよう

高専の入試は中学3年生を対象として行われます。
中学3年生では、自身がどのような分野に進みたいのか、まだはっきりしないという人も多くいると思います。
また中には、進学してから自身の興味は別の分野にあると気付く人もいるかもしれません。

一括募集を行っている高専の場合、具体的な進路は高専入学後に決定することとなります。
それぞれの分野がどのような学習や研究を行うのか、ある程度把握したうえで進路を決められるので、より納得のいく決定ができることでしょう。
一方で、高専入学後に決定される進路が希望通りにならないこともあります
この場合、大事なのは高専入学後の成績なので、高専に入学した後も、コツコツ努力を重ねるよりほかありません。

また、入試制度が変更になって、これまでの学科ごとの募集から一括募集に変更する学校が、これからも増える可能性があります。
情報は早めに収集し、入試の際に慌てないようにしましょう。

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