大学とは違う高等教育機関として、これまで高専をご紹介してきました。
しかし、大学ではない高等教育機関は高専だけではありません。
あまりなじみはないかもしれませんが、「大学校」と呼ばれる学校がいくつもあり、そこでも専門的な研究・教育が行われています。
大学校と呼ばれる学校とはどういったものか、そして具体的にどのような学校があるのか、ご紹介します。
大学校とは
いきなりですが、「大学校」という言葉は法律上に明確な定義を持つものではありません。
大学校という名称が学校名に使われているのは、その学校が「大学」ではないということを意味しています。
なお、大学とはどのような学校のことをいうのかは、後ほど説明します。
このように明確な定義がないため、大学校と呼ばれる学校は非常に多岐にわたっています。
一般的な大学入試と同じような入学試験を受けなければならない学校もあれば、必要な手続きさえ行えば、誰でも簡単に参加できる市民講座のようなものも大学校と名乗ることがあります。
ただここでは、大学に類似する高等教育機関としての大学校だけを取り上げていきます。
入学する際に大学入試と同じような試験を受けなければならず、かつ卒業したら大学と同じように学位が授与される学校を取り上げます。
大学と大学校の違い
大学
大学とは、学校教育法第1条に規定されている学校のことをいいます。
大学に入学できるのは高等学校もしくは中等教育学校を卒業した人、または12年の学校教育を修了した人とされており、一般的に大学と呼ばれる学校からイメージされるとおりです。
大学を設置することができるのは国、地方公共団体、学校法人に限られています。
ただ現在では、国が直接大学を設立・運営するということはなく、国が国立大学法人を設立し、その法人が大学の設立・運営にあたるという形になっています。
また地方公共団体も地方公共団体が直接大学を設立・運営することは少なく、公立大学法人を設立する形態をとることが多くなっています。
大学はすべて文部科学省の所管とされています。
大学校
学校教育法第1条の規定にある大学は、すべて文部科学省の所管に置かれています。
これに対して、ここで取り上げる大学校を入学する際に大学入試と同じような試験を受けなければならず、かつ卒業したら大学と同じように学位が授与される学校とした場合、大学校はすべて文部科学省以外の省庁の所管となります。
ただ、これ以外の共通点はあまりありません。
所管する省庁や学生の身分などには違いがあるので、詳しくは大学校の一覧で確認していきましょう。
学位が授与される大学校の一覧
| 大学校名 | 本部所在地 | 所管省庁 | 国家公務員 | 学費 | 学位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 防衛大学校 | 神奈川県横須賀市 | 防衛省 | 〇 | 不要 | 学士(人文科学、社会科学、理学、工学) |
| 防衛医科大学校 | 埼玉県所沢市 | 防衛省 | 〇 | 不要 | 学士(医学、看護学) |
| 海上保安大学校 | 広島県呉市 | 国土交通省海上保安庁 | 〇 | 不要 | 学士(海上保安) |
| 気象大学校 | 千葉県柏市 | 国土交通省気象庁 | 〇 | 不要 | 学士(理学) |
| 水産大学校 | 山口県下関市 | 農林水産省 | 必要 | 学士(水産学) | |
| 職業能力開発総合大学校 | 東京都小平市 | 厚生労働省 | 必要 | 学士(工学、生産技術) | |
| 国立看護大学校 | 東京都清瀬市 | 厚生労働省 | 必要 | 学士(看護学) |
防衛大学校や防衛医科大学校のように、学校自体が広く知られているものもありますが、その他の大学校については、はじめて聞いたという方もいるかもしれません。
これらの大学校はいずれも、文部科学省の所管ではなく防衛省や国土交通省、農林水産省、厚生労働省などの所管となります。
これ以外にも大学校の特徴はいくつかありますが、学校によって異なるので注意が必要です。
学生が国家公務員
大学校に入学した学生が、所管省庁に所属する国家公務員となる大学校があります。
国家公務員になるということは、毎月給料を受け取ることができますし、ボーナスに相当する年2回の期末勤勉手当のほか諸手当も支給されます。
一般の国家公務員と同じく1年に20日の年次休暇(いわゆる有給休暇)や特別休暇などもあるほか、医療保険や年金制度などの保障も受けられます。
大学校に進学するということが、大学校を所管する省庁に就職することを意味するのです。
学費が不要
大学校の中には、学費が一切かからないという学校があります。
学費が不要となる大学校は、身分が国家公務員となる大学校と一致しています。
またこれらの大学校では、入学金や授業料が無料となるだけでなく、寮費も不要となっています。
さらに食費がかからないという学校もあり、この場合、教科書代など教材費だけ負担すればいいということになります。
なお、学費がかかる水産大学校・職業能力開発総合大学校・国立看護大学校の3校の学費は、いずれも国立大学に準じた金額となっています。
学費がかかるとはいっても、その金額はリーズナブルといえます。
大学校の特徴を知り進路を考えよう
大学校は普通の大学とは違った教育機関です。
高専に進むことを考えている人の中には、人と違った進路を目指したいということで大学校に興味を持つ方もいるかもしれません。
ただ、大学校に進むということは国家公務員としてのキャリアのスタートを意味する場合もあり、学費をかけずに勉強できるという程度の軽い決断ではないことに注意が必要です。
学費も寮費もかからないという条件で給料も支給されるということから、非常に人気の高い大学校もあります。
そのような学校を志望校とする場合は、かなり早い段階から大学校入試を意識した準備を進めておきましょう。
なお、学校ごとに紹介する記事は別に準備していきますので、そちらも参照ください。



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