高専がどのような学校なのか、馴染みがないという人が多いと思いますが、高専について調べている方であれば、中学校を卒業してから入学する5年制の学校だということくらいは知っているかもしれません。
ただ、高専には専攻科という課程があることはあまり知られていないのではないでしょうか。
専攻科とはどのようなもので、専攻科を終えるとどんなメリットがあるのでしょうか。
また、どのようにして専攻科に入るのか、専攻科からどのような進路があるのか、データから確認していきます。
高専の専攻科とは?
高専の専攻科とは、高専に入学した人全員が学ぶ5年制の本科を卒業した後、さらに深く学び研究や実習を行う課程です。
専攻科は2年制となっており、本科5年とあわせて7年間、高専の施設で学ぶこととなります。
多くの高専の本科では、1学科あたり40名の定員となっており、少人数での教育が行われています。
ところが、専攻科ではさらにその人数は少なくなり、専攻科の定員は本科の1割程度になります。
そのため、より少数精鋭の環境の中で、自身の決めたテーマの研究を進めることができます。
専攻科のメリット①大学卒業と同等になる
高専の専攻科に進む最大のメリットは、専攻科を修了すると大学卒業と同等になることです。
高専の専攻科を修了すると、4年制の大学を卒業した人と同じ「学士」の学位が与えられます。
高専の本科を卒業した人は、短期大学を卒業した人と同じ「準学士」の学位とされており、違いがあるのです。
学士の学位を得ると、企業に就職する際に大卒扱いになります。
高専の本科を卒業した人は、短期大学を卒業した人と同じ枠での採用となり、初任給が大卒の人より低くなるのが一般的です。
これに対して、高専の専攻科を修了した人が就職した場合は大卒として採用されるので、初任給も大卒と同額になります。
また、専攻科を修了した人は、大学院に進学することができます。
より専門的な研究を行いたい人は大学院を受験して、さらに自身のキャリアを高めることができるのです。
専攻科のメリット➁学費が安い
高専本科の授業料は国立大学より安いのですが、専攻科であってもその金額は変わりません。
高専の授業料は年間234,600円となっており、国立大学の標準的な授業料535,800円の半分以下です。
そのため、少ない学費で大学卒業の学位を得られるのは大きな魅力です。
単純に公立高校と国立大学、高専の本科と専攻科の学費を並べると、以下のようになります。
| 公立高校 | 国立大学 | ||||||||
| 入学金 | 1年 | 2年 | 3年 | 入学金 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 合計 |
| 5,650 | 118,800 | 118,800 | 118,800 | 282,000 | 535,800 | 535,800 | 535,800 | 535,800 | 2,787,250 |
| 国立高専本科 | 国立高専専攻科 | ||||||||
| 入学金 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 入学金 | 1年 | 2年 | 合計 |
| 84,600 | 234,600 | 234,600 | 234,600 | 234,600 | 234,600 | 84,600 | 234,600 | 234,600 | 1,811,400 |
高校の授業料については、2025年度において、一部の都道府県を除いて所得制限付きの支援金が実施されており、公立高校・国立高専ともに1年~3年までの学費が1年あたり最大で118,800円が補助されています。
この支援金が2026年度から拡充され、国公立・私立高校を問わずすべての世帯で授業料の無償化が実現することとされています。
その結果、国立高専本科の1年〜3年の授業料234,600円も全額が免除されます。
したがって、2026年度以降の学費は以下のようになると考えられます。
| 公立高校 | 国立大学 | ||||||||
| 入学金 | 1年 | 2年 | 3年 | 入学金 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 合計 |
| 5,650 | 0 | 0 | 0 | 282,000 | 535,800 | 535,800 | 535,800 | 535,800 | 2,430,850 |
| 国立高専本科 | 国立高専専攻科 | ||||||||
| 入学金 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 入学金 | 1年 | 2年 | 合計 |
| 84,600 | 0 | 0 | 0 | 234,600 | 234,600 | 84,600 | 234,600 | 234,600 | 1,107,600 |
2026年度以降、高校授業料の無償化が実現すると、公立高校から国立大学に進学する場合と国立高専本科から専攻科に進学した場合の学費の差はさらに大きくなります。
専攻科のメリット③高専本科生だけを対象とした入試が実施される
高専の専攻科に進学してくるのは、すべて高専の本科を卒業した人です。
大学入試の場合はすべての高校生がライバルとなるわけですが、専攻科の入試はもっと狭い世界での競争となります。
狭き門をくぐり抜けるのは簡単ではないのですが、専攻科に進学する人の中には推薦で進学が決まる人も多くいます。
一例として、推薦入試と学力入試の合格者数を分けて公表している鈴鹿高専をご紹介します。
令和6年度の卒業生のうち鈴鹿高専専攻科に合格したのは49名でした。
このうち推薦入試で合格したのは16名、学力入試で合格したのは33名という内訳になっています。
前年度の令和5年度は推薦入試が20名、学力入試が23名となっており、さらにもう1年前の令和4年度では推薦入試が20名、学力入試が28名となっています。
こうしてみると、推薦入試で合格する人数がかなり多くいることが分かります。
推薦入試を受けるには、本科で一定以上の成績が必要であり決して楽な試験ではありませんが、日頃から頑張れる人であれば推薦入試で進路を決められるチャンスが広がります。
専攻科の入試
専攻科に入るには、入学試験に合格しなければなりません。
専攻科でも入試が実施されていますが、どれくらいの人が受験し合格しているのか、その人数をご紹介します。
ここで取り上げるのは、要覧で専攻科の試験の人数を公表している呉高専です。
| 推薦 | 学力 | |||||
| 年度 | 志願者数 | 合格者数 | 入学者数 | 志願者数 | 合格者数 | 入学者数 |
| 令和5年度 | 22 | 21 | 21 | 46 | 39 | 19 |
| 令和6年度 | 21 | 19 | 19 | 32 | 25 | 11 |
| 令和7年度 | 26 | 25 | 25 | 25 | 21 | 8 |
推薦入試の受験者数は、ここ数年安定していることが分かります。
受験した人のほとんどが合格しており、合格した人は全員が進学しています。
もっとも、推薦入試では合格したら進学するのが受験の条件となっているので、合格者が全員進学するのはこれまでもこれからも変わりないはずです。
一方、学力入試は受験しても2割程度の不合格者がいますし、合格しても進学しない人も多くいます。
学力入試を受験している人は、ほかに大学の編入学試験を受験している可能性が高く、呉高専の専攻科に合格してもほかの大学に合格したら、そちらを選択するという人がいるのでしょう。
ほかの高専の専攻科がどのような状況なのか、すべての高専で受験者数や合格者数が公表されているわけではないので、ここでご紹介した呉高専の状況を参考にしてください。
専攻科からの進路
専攻科を修了すると、大学卒業と同じ学士の学位を得られます。
大学を卒業する人と就職する人と大学院に進学する人がいるように、高専の専攻科を修了した人も就職と進学に分かれます。
先ほどご紹介した呉高専の専攻科の令和6年度卒業生の進路状況は、以下のようになっています。
| 修了者数 | 就職者数 | 進学者数 | その他 |
| 39 | 24 | 15 | 0 |
呉高専専攻科の場合、就職が6割、進学が4割程度となっているようです。
就職先の地域としては広島県が最多の9名、次いで東京都の6名、大阪の3名となっています。
進学先としては、広島大学大学院が最も多い5名、次に東北大学大学院、奈良先端科学技術大学院大学、九州工業大学大学院の2名となっています。
【まとめ】高専の専攻科は就職も進学も高い実績を残している
高専専攻科は、単なる公選制の受け入れ先で、大学卒業の資格を得るためだけの機関というわけではありません。
少人数教育でより深い研究を行い、目覚ましい成果を残しているのです。
そのため、名だたる企業に就職したり大学院に進学したりと、非常に高い実績を残しています。
これから高専に進学しようと考えている人は、高専から専攻科に進むこともあわせて考えておくといいと思います。



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