中学校を卒業して高専に行く人は、1年でおよそ1万人で、この人数は数十年にわたって大きく変わっていません。
大きく増えはしないが、少子化の中でも減っていないのは、高専に求められる役割を高専自体が果たしているからといえます。
ただ、多くの人が高校に進学する中、高専に進学するのは大きな決断となり、高専での学びが自身の進路に役立つか、よく考えなければなりません。
高専に進学するメリットとデメリットを確認しておき、志望校の決定に役立てていきましょう。
高専に行くのと高校に行くのとは大きな違いがある
中学校を卒業すると、多くの人は高校に進学します。
また高等専修学校と呼ばれる、高校卒業資格の取得と専門分野の修得を目指す学校に進学する人もいます。
これらの進路に進む者が大半であり、ごく少数の卒業生が就職します。
ただ、これ以外の進路として、ご紹介する高専(高等専門学校)があります。
高専は中学校の卒業生が進学する学校ですが、高校とは大きな違いがあります。
その違いを理解せずに進路を決定すると、後悔することとなってしまうので注意しましょう。
高専 | 高校 | |
---|---|---|
設置者 | 大半が国立、一部公立や私立 | 公立、私立が多く一部国立 |
入学試験の方法 | 推薦と一般が半々程度 | 学校により大きく異なる |
年数 | 5年 | 3年(中高一貫の場合は中学1年から6年) |
卒業後の進路 | 進学と就職が半々程度 | 学校により大きく異なる |
進学時の選抜方法 | 大学2・3年への編入学試験(推薦・一般) | 多様な入学試験 |
就職先 | 大企業が多い | 大企業の子会社や中小企業が多い |
高専と高校の違いを一覧にしてみました。
在籍年数には明確な違いがあり、高校は3年に対して高専は5年となっています。
入試の方法は高校の場合、中にはほとんどの入学者を推薦入試で確保している学校がある一方、推薦入試による合格者の比率が10%以下となっている学校もあります。
一方、高専の場合も学校による違いはありますが、約50%程度を推薦入試で確保している学校が多くなっています。
一番の違いは、卒業後の進路です。
高専を卒業した後の進路は、進学と就職がほぼ半々に分かれます。
このうち進学する人のほとんどは大学の編入学試験を受けて、卒業後は大学3年生(学校によっては2年生)になります。
高校生は卒業するタイミングで大学などを受験しますが、大学入試とはまったく異なるので注意が必要です。
編入学試験は、通常の大学入試と比較しても、簡単で楽ではありません。
ただ、高専生だけの枠を設けている大学もあり、高専→大学のルートは知名度は低いのですが、高専生にとっては一般的となっています。
高専に行くメリット
高専に行くメリットとしてあげられるのは、以下のとおりです。
早くから専門分野を学習・研究できる
大学進学を目指して高校に進むと、3年間ほぼ受験勉強のために時間を費やします。
そのため、大学に進学した時のために専門分野に関する知識を得たいと思っていても、高校ではあまり専門的な知識を得る機会はありません。
また、工業高校などでは就職を前提としたカリキュラムとなっており、大学入試のための勉強が不十分になってしまいます。
高専では、普通科の高校と同じような授業も行われますが、早い段階から専門的な授業も行われ、自分の興味・関心のある分野により早く触れることができます。
準学士の学位を取得できる
高等教育機関を卒業すると、学位が授与されます。
大学を卒業した人は学士、大学院の修士課程または博士課程の前期課程を修了すると修士などと決められています。
高専を卒業した人には、全員に準学士の学位が与えられます。
高校を卒業しても学位はないので、高専に進学した場合との大きな違いとなっています。
高専を卒業すれば、準学士号は必ず取得できるので、学位を保有しているからといって、就職や進学に有利になるわけではありません。
ただ、学位は国際的に統一されているので、高専を卒業した人が留学したり、海外で就職する際には意味があります。
編入学試験を受験して大学に進める
高専を卒業して大学に進学する場合、大学への編入学試験を受験できます。
編入学試験は、一般的な大学入試とはまったく異なり、対象者が限定されたうえで、必要な専門知識を有しているかが問われます。
高専を卒業している学生だけを対象とした編入学試験が実施される大学もあり、高専→大学のルートは多くの高専生が選択します。
編入先の大学は国公立大学が多く、東京大学や京都大学をはじめとする難関大学に進む学生もいます。
高校から大学に進むより倍率は低いケースが多く、はじめから大学編入をねらって高専に入学してくる人もいます。
就職率が高い
高専を卒業した後、就職する学生も多くいます。
高専生の就職は、高校卒業後に就職するのとは大きな違いがあります。
高専には毎年、数多くの求人が企業から寄せられます。
就職希望者20人程度に対して、企業からの求人数は1,000件以上となることも珍しくありません。
そのため就職を希望する学生は、自身の希望に近い企業を選んだうえ、学校推薦でほぼ100%就職できます。
また、高専には地元の企業だけでなく、誰もが知る大企業からも多くの求人が寄せられます。
そのため、高専を卒業したら地元を離れて就職する学生も多くいます。
学生寮がある
すべての国立高専には学生寮があります。
地元出身でない学生も多く、遠方にある高専にもそれほど抵抗なく入学できます。
なお、地元出身の学生であっても学生寮に入寮できますが、居住地域に制限が設けられている場合があり、入寮希望者が多い場合には希望どおりにならないケースもあります。
学費が安い
高専を卒業した後に専攻科に進めば、大学を卒業した場合と同じ学士の称号を取得できます。
高校から大学に入学し卒業した場合より、高専に通う方が、トータルの学費は安くなります。
- 国立高専(5年)→国立高専専攻科(2年)の学費
国立高専の学費は1年あたり234,600円であり、トータルで1,642,200円です。 - 公立高校(3年)→国立大学(4年)の学費
公立高校の学費は1年あたり118,800円、国立大学の学費(標準額)は1年あたり535,800円であり、トータルで2,499,600円です。
高専に進んだ場合でも、高校に進学した場合と同じように、3年間は就学支援金の対象となるので、高専に進学しても不利にはなりません。
校則が緩い
高専は中学校を卒業した後に進む学校であり、高校と同じような学校と思われるかもしれません。
しかし、高専はどこも学生の自主性が重視されており、高校のような校則がない学校があります。
(もちろん、高校でもほとんど校則がない学校もありますが)
高専の中には制服がないなど、学生の自由が広く認められている学校があります。
ただ実際には、高専は校則が緩く自由というより、学生自身がどうすべきか自分で考えて行動することが求められているといえます。
高専に行くデメリット
高専に進むと、デメリットになると考えられることもあります。
どの学科に進むかを決めるのが難しい
高専の入試を受験するのは、中学3年生の秋以降となります。
高専入試に出願する際には、どの学校を受験するのかだけでなく、どの学科を希望するのかも選択しなければなりません。
中学生の段階で、将来の進路に大きく影響する学科を決めなければならず、その決断は簡単ではありません。
高専に興味を持ったのであれば、どの学科で何を学べるのか、深く研究する必要があります。
また、高専によっては学科に分けず一括募集している学校があり、そのような学校を志望すれば、専攻する専門分野の決定を高専入学後に遅らせることができます。
進路の変更が難しい
高専に進学すると、多くの人が進む高校→大学の進路とはまったく違うルートを進みます。
しかも、高専で専攻した学科やコースは、そのまま自身の就職まで直結します。
しかし、高専入学後に別の分野に興味が出てきたので、進路を変更したいと考える人もいるでしょう。
高校に進学した場合であれば、3年間のうちに卒業後どのような進路を選ぶのか、じっくり考える時間があります。
しかし、高専の場合はすでに専門的な進路を進み始めており、別の進路に進もうとしても、簡単にはいきません。
高専を3年で終えて大学に進学する人もいますが、高専の学習内容は大学受験に特化していないため、簡単なことではありません。
5年間ほぼ同じメンバーとの生活になる
高専の多くは1学科1クラスとなっており、入学した時のメンバーは基本的に5年間変わりません。
そのため、クラスメイトとの人間関係に悩むと、卒業まで引きずるケースもあります。
ただ、高専の学生は、あえて普通の高校にはいかず、早くから専門的な学習をしたいために高専に進学してきています。
そのため、人間関係で悩まされるようなトラブルに巻き込まれるケースは、実際には多くないといえるでしょう。
留年率が高い
高専での学習は、基本的に学生の自主性に任されていますが、その分結果が出なければ、自身でその責任を負います。
その結果、高専は高校に比べると留年率が高いといわれます。
5年間の在学中に同級生が下級生になることも、上級生だった人が同級生になることも珍しくありません。
【まとめ】高専に進学すればメリットも大きいが慎重に考えるべき点もある
高専に進学すると、在学中から専門的な勉強ができ、高校での学習より楽しいと感じられる人が多いといえます。
また卒業後の進路は進学・就職のいずれも多く、その人にあわせた選択ができます。
ただ、高専に進学すると、高校から大学に入学するような進路を選択することは難しくなります。
専攻した学科やコースを変更することも難しいので、受験する段階で慎重に進路を決める必要があります。
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