高専→大学編入の道 ①豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学

高専卒業後の進路

高専を卒業した学生が大学に編入する際、有力な進学先の候補となるのが豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学です。
2つの技術科学大学は、高専からの編入学者が大半を占めており、また高専機構の資料によれば、実際に多くの高専卒業生が技術科学大学に編入していることが分かります。

2つの技術科学大学に編入するにはどのような方法があるのか、またどの高専が技術科学大学に多く進学しているのか、高専機構や各学校が公表しているデータを確認していきましょう。

豊橋技術科学大学

豊橋技術科学大学は1976(昭和51)年に設立された国立大学です。
その概要については、すでに別の記事で取り上げたので、詳しくはそちらを参照してください。

設立の経緯もあり、高専の卒業生が多数、3年生に編入学で入学しています。
豊橋技術科学大学が2023年4月に公表した、令和6年度における第3年次学生の募集要項は以下のとおりです。

募集要項には、編入学に関する具体的な事項が記載されています。
その内容を確認していきましょう。

選抜方法

  • 推薦入試
  • 学力入試
  • 外国人留学生入試
  • 社会人入試

留学生の方を除けば、高専から編入学を目指す学生は、推薦入試か学力入試のいずれかを受験することとなります。

課程と募集人員

課程募集人員うち推薦入試うち学力入試
工学部機械工学課程954748
工学部電気・電子情報工学課程804040
工学部情報・知能工学課程804040
工学部応用化学・生命工学課程552728
工学部建築・都市システム学課程502525
合計360179181

日程

編入学の日程は、一般的な大学入試とは試験の時期が大きく異なります。
令和6年度の編入試験における日程は、以下のとおりでした。

  • 出願登録期間 2023/4/17〜5/9
  • 願書受付期間 2023/4/24〜5/10
  • 推薦入試合格発表 2023/6/12
  • 学力入試、外国人留学生入試、社会人入試試験 2023/6/24
  • 学力入試、外国人留学生入試、社会人入試合格発表 2023/7/18

受験資格

推薦入試

推薦入試は、全国の高専を卒業する見込みの学生だけが受験できます。
大学や短大、専門学校などの出身者は受験資格がなく、出願できません。
高専の学校長が推薦するという形式であり、他の国公立大学と重複して推薦してもらうことはできません。

学力入試

学力入試は高専卒業見込みの学生のほか、大学や短大、専門学校などの出身者でも、条件を満たせば出願できます。

試験の内容

推薦入試

推薦入試は、学科試験や面接は実施されません。
高専から提出された推薦書、調査書等の書類審査のみで合否が判定されます。

学力入試

学力入試は、一般科目と専門科目に分けて試験が実施されます。
一般科目では、英語と国語の試験が行われます。
また専門科目では、応用数学のほか課程により異なる科目の試験が実施されます。
課程によって選択できる科目に違いがあるだけでなく、選択できる科目の数にも違いがあるので、注意が必要です。
なお、応用化学・生命工学課程では応用数学と面接が実施され、選択科目の試験は行われません。

豊橋技術科学大学の学力試験の配点は以下のようになっています。

科目名英語国語応用数学志望課程別専門科目(面接)合計
配点150100100150500

長岡技術科学大学

長岡技術科学大学は1976年に設立された国立大学です。
豊橋技術科学大学と同じく、設立の経緯もあり、高専の卒業生が多数、3年生に編入学で入学しています。
長岡技術科学大学が2023年4月に公表した、令和6年度における第3年次学生の募集要項は以下のとおりです。

募集要項には、編入学に関する具体的な事項が記載されています。
その内容を確認していきましょう。

選抜方法

  • 推薦入試(外国人留学生を含む)
  • 学力入試(一般入試・社会人入試・外国人留学生入試)

留学生の方を除けば、高専から編入学を目指す学生は、推薦入試または学力入試のうち一般入試を受験することとなります。

分野と募集人員

課程募集人員うち推薦入試うち学力入試
工学部機械工学分野834142
工学部電気電子情報工学分野944747
工学部情報・経営システム工学分野452223
工学部物質生物工学分野713536
工学部環境社会基盤工学分野472324
合計340168172

日程

高校生が受験する大学入試は、一般的に年末〜翌年2月頃に実施されます。
しかし、編入学試験はこれとはまったく異なる時期に実施されるため、注意が必要です。
参考までに、令和6年度における推薦入試・学力入試の試験日程をご紹介します。

  • インターネット出願登録期間 2023/4/18〜5/8
  • 出願書類受付期間 2023/4/25〜5/8
  • 推薦入試合格発表 2023/6/8
  • 学力入試試験 2023/6/24〜6/25
  • 学力入試合格発表 2023/7/13

受験資格

推薦入試

推薦入試は、全国の高専を卒業する見込みの学生だけが受験できます。
大学や短大、専門学校などの出身者は受験資格がなく、出願できません。
高専の学校長が推薦する形式であり、他の国公立大学と重複して推薦してもらうことはできません。

学力入試

学力入試は高専卒業見込みの学生のほか、大学や短大、専門学校などの出身者でも、条件を満たせば出願できます。

試験の内容

推薦入試

推薦入試では、学科試験や面接は実施されません。
高専の学校長が作成した調査書及び推薦書、志願者が自ら作成した志望調書の内容を総合的に評価し、合否が判定されます。

学力入試

学力入試のうち一般入試では、学力試験と面接が実施されます。

学力試験では、すべての分野に共通する一般科目として国語と英語が実施されます。
また専門科目として数学・応用数学と志望分野別科目の試験が行われます。
志望分野ごとに選択できる科目の内容は大きく異なるため、注意が必要です。

面接は試験日程の2日目にあたる6/25に実施されます。
個人面接であり、人物や適性の評価が行われます。

長岡技術科学大学の学力試験の配点は以下のようになっています。

科目名国語英語数学・応用数学志望分野別科目面接合計
配点1002002003002001,000

高専ごとの実績

2つの技術科学大学は愛知県と新潟県にあり、日本列島のほぼ中央付近にあるといえます。
そのため、全国の国立高専からまんべんなく編入してくる学生がいます。
ただ高専によっては、就職する学生が多い学校や、他の大学に編入する学生が多い学校もあります。
そこで、令和4年度の卒業生について、各高専が公表している「学校要覧」などのデータを基に、学校別、学科・コース別に技術科学大学への進学率が10%を上回った高専をまとめました。

高専名学科・コース名技術科学大学への進学者数卒業生に占める割合
函館高専生産システム工学科電気電子コース515.63%
函館高専物質環境工学科931.03%
釧路高専1712.59%
旭川高専機械システム工学科412.90%
旭川高専システム制御情報工学科512.20%
旭川高専物質化学工学科821.05%
八戸高専1611.11%
福島高専2412.18%
茨城高専国際創造工学科機械・制御系1014.71%
小山高専機械工学科410.53%
東京高専機械工学科715.56%
東京高専電子工学科513.51%
長岡高専5026.60%
福井高専2412.90%
岐阜高専機械工学科717.95%
豊田高専電気・電子システム工学科613.95%
舞鶴高専1813.04%
明石高専都市システム工学科410.00%
和歌山高専生物応用化学科512.50%
和歌山高専環境都市工学科410.81%
松江高専機械工学科411.43%
松江高専電気情報工学科413.33%
阿南高専創造技術工学科電気コース513.51%
阿南高専創造技術工学科情報コース411.11%
香川高専機械電子工学科411.76%
香川高専電子システム工学科515.15%
香川高専情報工学科410.26%
久留米高専電気電子工学科410.81%
久留米高専生物応用化学科822.86%
熊本高専生物化学システム工学科1025.64%
鹿児島高専電気電子工学科513.16%

学校ごとに公表しているデータに違いがあります。
学科ごとあるいはコースごとの編入者の数を公表している学校もあれば、学年全体の編入者を公表している学校もあります。
そのため、同じ学校でも学科によって傾向に違いがある可能性はあるので、注意が必要です。
このデータから分かる、技術科学大学への編入のポイントをご紹介します。

編入する学生に地域性はあまりない(まったくないわけではないが)

高専から技術科学大学に編入する学生の出身校に、特段の地域性はありません。
大ざっぱに、北にある高専からは長岡、南にある高専からは豊橋に多く進学しているという傾向はあります。
ただ、技術科学大学に多くの学生が進学している高専は、北から南まで幅広く存在していることが分かります。

長岡と豊橋では地元の高専からの進学者の傾向に違いがある

長岡高専からは地元が近いこともあって、長岡技術科学大学に多くの学生が進学しています。
学校要覧を確認すると、長岡高専の卒業生全体の4分の1以上が、長岡技術科学大学に編入を果たしていることが分かります。

一方、豊橋技術科学大学のお膝元にあたる愛知県の豊田高専からは、1つの学科だけがランク入りしており、決して地元の技術科学大学に多くの学生が進んでいるわけではありません。
学校の卒業生全体で見ればこの割合は10%以下となり、長岡技術科学大学がある長岡高専とは大きく異なります。

同じ学校でも学科やコースによる違いがある

技術科学大学への進学者が多い学科やコースを見てみると、同じ高専でも学科やコースによる違いがあることが分かります。

例えば物質環境工学科が31.03%となり、全国の高専で最も技術科学大学への進学率が高くなった函館高専ですが、社会基盤工学科は7.50%にとどまります。
さらに生産システム工学科の電気電子コースは15.63%となる一方で、機械コースは4.55%となっています。

このような進学率のバラつきは、ほとんどの高専で見られます。
年によって傾向に違いがあることも考えられることから、気になる人は数年分のデータを調べてみるのもいいでしょう。

学科やコースによって傾向がある

技術科学大学で学ぶことのできる分野は、高専に設置されているすべての学科やコースに対応しているものではありません。
そのため、高専の違いに関係なく、技術科学大学への進学者が多い学科やコースの傾向があるといえそうです。

全体をみると、「機械」や「電気」、「電子」といった名称の学科やコースが多く、そのほかに「生物」や「物質」、「情報」といった学科・コースが続いているようです。
技術科学大学にどのような専攻があるのかをあらかじめ確認しておき、それにあった学科を選ぶことが高専選びにおけるポイントの1つになりそうです。

技術科学大学への編入はまず推薦入試狙い

豊橋、長岡の2つの技術科学大学については、高専からの推薦入試の枠が3年次入学の定員の半分を占めています。
また大学や短大、専門学校からの推薦入試は制度上なく、高専生だけに認められています。
そのため、高専から推薦で技術科学大学に編入することは高専生の特権であり、それだけの魅力のある進学先といえます。

高専から大学への編入を目指す場合、技術科学大学に推薦で入学するのが、最も主要なルートです。
推薦入試のために特別なことをする必要はありません。
高専での勉強を頑張ることが、技術科学大学に推薦で入学するのに最も重要なことです。

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