高専は高校1年生〜大学2年生に相当する5年間、高校での教育とは異なる教育を実施する教育機関です。
中には、高校の進学校に進むのと同じくらいの入学偏差値となっている高専がありますが、必ずしも進学を目指して入学してくる学生ばかりではありません。
高専は若い技術者の育成を目的として設立された学校であり、大学への進学を目指すために作られた学校ではなく、またそのような教育を行っているわけでもないからです。
しかし、明石高専は大学への編入学で高い実績を誇ります。
また進学だけでなく就職においても高い実績を残しています。
はたして明石高専とはどのような学校なのか、様々な角度からご紹介していきましょう。
明石高専の基本情報
明石高専とはどのような学校なのか、まずは基本的な情報を確認しておきましょう。
- 学校名 明石工業高等専門学校
- 所在地 兵庫県明石市魚住町西岡679番の3
- 設立年度 1962(昭和37)年4月1日
- 設置学科 機械工学科、電気情報工学科、都市システム工学科、建築学科
- 定員 各学科40名、1学年あたり160人
明石高専は1962(昭和37)年に開校した高専1期校の12校のうちの一つです。
ちなみに1期校はほかに函館、旭川、平(現福島)、群馬、長岡、沼津、鈴鹿、宇部、高松(現香川)、新居浜、佐世保があります。
ただし、1期校とその後に設立された2期校以降の学校で、進学実績に違いがあるわけではないので誤解のないようにして下さい。
明石高専の進学実績
明石高専の各学科の進学実績は非常に高いものとなっています。
実際にどのような進学実績を残しているのか、その内容を確認していきましょう。
機械工学科
機械工学科を2023(令和5)年3月に卒業した令和4年度卒業生の進路は以下のようになっています。
卒業生 | 40 |
進学者数 | 26 |
うち高専専攻科 | 4 |
うち大学 | 22 |
進学率65%という割合は、他の高専と比較しても、特に高いというわけではありません。
しかし、進学した26人のうち大学に編入した22人の進学先には大きな特徴があります。
この22人の進学先は以下のとおりです。
- 東京大学4
- 神戸大学4
- 岡山大学4
- 大阪大学2
- 東京都立大学2
- 筑波大学
- 東京工業大学
- 福井大学
- 豊橋技術科学大学
- 香川大学
- 立命館大学
高専からの編入枠を多く設けている技術科学大学に編入しているのはわずか1名であり、多くの学生は東京大学や神戸大学をはじめとする国立大学に進学しています。
編入できる学生の数は少なく、学科試験をクリアしなければならない大学が数多く含まれています。
過年度の難関大学への進学実績もあわせてご紹介しましょう。
令和3年度(進学者数23)
- 大阪大学6
- 東北大学2
- 神戸大学2
- 北海道大学
- 京都大学
令和2年度(進学者数23)
- 大阪大学6
- 東北大学2
- 東京大学2
- 九州大学
令和元年度(進学者数22)
- 大阪大学5
- 北海道大学
- 東京工業大学
- 名古屋大学
- 神戸大学
電気情報工学科
電気情報工学科を2023(令和5)年3月に卒業した令和4年度卒業生の進路は以下のようになっています。
卒業生 | 39 |
進学者数 | 28 |
うち高専専攻科 | 7 |
うち大学 | 21 |
進学率は70%を超え、明石高専の他の学科より高くなっています。
またこの表にはありませんが就職者は6人で、他の高専や学科と比較してもかなり少なくなっています。
大学に進学した21人の進学先は以下のとおりです。
- 大阪大学7
- 東京工業大学2
- 山梨大学2
- 神戸大学2
- 東北大学
- 横浜国立大学
- 奈良女子大学
- 和歌山大学
- 広島大学
- 九州工業大学
- 九州大学
- モンクット王工科大学(タイ)
こちらも難関と呼ばれる大学が多く並んでいます。
中でも地元といえる大阪大学には、大量の学生が進学していることが分かります。
過年度の難関大学への進学実績もあわせてご紹介しましょう。
令和3年度(進学者数36)
- 東京大学4
- 大阪大学3
- 神戸大学3
- 名古屋大学
- 京都大学
令和2年度(進学者数32)
- 大阪大学7
- 東京大学3
- 京都大学
- 神戸大学
令和元年度(進学者数31)
- 神戸大学4
- 東京大学3
- 大阪大学3
- 東北大学
- 名古屋大学
- 京都大学
- 九州大学
都市システム工学科
都市システム工学科を2023(令和5)年3月に卒業した令和4年度卒業生の進路は以下のようになっています。
卒業生 | 40 |
進学者数 | 26 |
うち高専専攻科 | 8 |
うち大学 | 18 |
機械工学科と同じく、進学率は65%となっています。
進学者のうち、専攻科に進学する学生の数が、明石高専の他の学科より多くなっていることも特徴といえます。
大学に進学した18人の進学先は以下のとおりです。
- 長岡技術科学大学4
- 北見工業大学2
- 東北大学2
- 東京大学2
- 神戸大学2
- 埼玉大学
- 宇都宮大学
- 大阪大学
- 広島大学
- 関西大学
- 甲南大学
他の高専では最も多くの学生の進学先となることが多い技術科学大学が、上位に登場しました。
ちなみに、明石高専から長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学への進学者は、すべての学科の進学者108人のうち5人だけです。
過年度の難関大学への進学実績もあわせてご紹介しましょう。
令和3年度(進学者数27)
- 大阪大学
- 神戸大学
- 九州大学
令和2年度(進学者数21)
- 大阪大学2
- 九州大学2
- 京都大学
- 神戸大学
令和元年度(進学者数24)
- 神戸大学2
- 東京工業大学
建築学科
建築学科を2023(令和5)年3月に卒業した令和4年度卒業生の進路は以下のようになっています。
卒業生 | 41 |
進学者数 | 28 |
うち高専専攻科 | 4 |
うち大学 | 24 |
建築学科の進学率は4つの学科の中では2番目に高くなっています。
ただしいずれの学科も65〜70%の進学率であり、突出していずれかの学科の進学率が高い(低い)ということはありません。
大学に進学した24人の進学先は以下のとおりです。
- 九州大学3
- 千葉大学2
- 東京都立大学2
- 東北大学
- 筑波大学
- 横浜国立大学
- 新潟大学
- 信州大学
- 岐阜大学
- 京都工芸繊維大学
- 神戸大学
- 和歌山大学
- 島根大学
- 岡山大学
- 広島大学
- 佐賀大学
- 鹿児島大学
- 滋賀県立大学
- 東京都市大学
- ケンブリッジリージョナルカレッジ(イギリス)
他の学科と比較すると、進学先は多岐にわたります。
ただその中でもほとんどが国公立大学となっており、九州大学をはじめとする難関大学にも多くの学生が進学していることが分かります。
過年度の難関大学への進学実績もあわせてご紹介しましょう。
令和3年度(進学者数27)
- 大阪大学2
- 東京大学
- 神戸大学
- 九州大学
令和2年度(進学者数22)
- 北海道大学
- 大阪大学
- 神戸大学
- 九州大学
令和元年度(進学者数24)
- 北海道大学
- 神戸大学
- 九州大学
明石高専の就職実績
明石高専の卒業生の中では、就職するのは少数派となっています。
しかし、高専は企業からの需要が高く、求人倍率は数十倍となっており、多くの候補から自分の希望にあった就職先を選ぶことができます。
明石高専を2023(令和5)年3月に卒業した令和4年度卒業生がどのようなところに就職しているのか、学校のホームページで公表されているデータからご紹介します。
機械工学科
機械工学科の令和4年度卒業生の就職先は以下のとおりです。
- アイリスオーヤマ㈱
- AGC㈱
- 川重明石エンジニアリング㈱
- ㈱京都製作所
- 京セラ㈱
- ㈱JERA
- 新明和工業㈱
- 日本車輌製造㈱
- 不動技研工業㈱
- マツダ㈱
- 三菱重工業㈱2
特筆すべきは、就職が難しいと思われる三菱重工業に2人の卒業生が就職していることです。
ちなみに、令和3年度には3名が東海旅客鉄道㈱(JR東海)に就職しています。
その他の会社も名だたる企業が多く、また機械工学の知識を活かせそうな就職先となっています。
電気情報工学科
電気情報工学科の令和4年度の卒業生の就職先は以下のとおりです。
- 大阪ガス㈱
- キヤノンマーケティングジャパン㈱
- ㈱クボタ
- コベルコソフトサービス㈱
- 任天堂㈱
- ヤフー㈱
兵庫県明石市にある学校ということで、関西を地盤とする大企業が多い印象です。
就職は6名だけですが、いずれも高いレベルでの希望を叶えているといえます。
都市システム工学科
都市システム工学科の令和4年度卒業生の就職先は以下のとおりです。
- 大阪広域水道企業団
- オリエンタル白石㈱
- 関西電力㈱
- 協和設計㈱
- (一社)近畿建設協会
- ㈱修成建設コンサルタント
- 大成建設㈱
- 東海旅客鉄道㈱
- ㈱NIPPO2
- 本州四国連絡高速道路㈱
- 国土交通省
- 姫路市役所
学科の性格そのまま、建設関係の企業のほか、公務員などの公的な仕事を選ぶ学生も多くいます。
過年度をみても、国家公務員・地方公務員の道に進む学生が他の学科より多くなっています。
建築学科
建築学科の令和4年度の卒業生の就職先は以下のとおりです。
- ㈱大林組
- 関西電力㈱
- ㈱J-POWERハイテック
- 須賀工業㈱
- 住友不動産㈱
- 住友林業緑化㈱
- ㈱総合設備コンサルタント
- 阪急阪神不動産㈱
- ㈱ピーエス三菱
- 東京都庁
- 大阪市役所
- 吹田市役所
- 神戸市役所
建築学科からも建築関係の企業に就職するほか、公務員になる学生も多くいます。
明石高専専攻科修了後の進路
各高専には2年制の専攻科が設置されており、5年の課程を終えた学生が、さらに教育・研究を行うために進学します。
専攻科に進む学生の多くは、自校の高専から試験を受けて入学し、専攻科での2年間の課程を修了すると、大学を卒業したのと同じ学位を得ることができます。
学位を得た後は、大学生と同じように大学院に進学するか就職するかのいずれかとなります。
そこで、明石高専専攻科を修了した後の学生の進路についてご紹介します。
進学先としては有名大学の大学院、就職先としては大企業、公務員などの名前が並んでいます。
機械・電子システム工学専攻
おもに明石高専の機械工学科や電気情報工学科を卒業した学生が進学してきます。
令和4年度(修了生数8)
進学5
- 大阪大学大学院3
- 東京工業大学大学院
- 奈良先端科学技術大学院大学
就職3
- オムロン㈱
- ナブテスコ㈱
- 三菱重工業㈱
令和3年度(修了生数5)
進学3
- 大阪大学大学院
- 神戸大学大学院
- 奈良先端科学技術大学院大学
就職2
- 富士通Japan㈱
- ㈱モリタホールディングス
令和2年度(修了生数13)
進学8
- 東京大学大学院2
- 東京工業大学大学院2
- 名古屋大学大学院
- 大阪大学大学院
- 奈良先端科学技術大学院大学
- 京都先端科学大学大学院
就職5
- 神戸市役所2
- シスメックス㈱
- ㈱日立パワーソリューションズ
- 三菱電機㈱
令和元年度(修了生数8)
進学5
- 奈良先端科学技術大学院大学2
- 東京大学大学院
- 京都大学大学院
- 大阪大学大学院
就職3
- キヤノンメディカルシステムズ㈱
- 山陽特殊製鋼㈱
- ㈱ノーリツ
建築・都市システム工学専攻
おもに明石高専の都市システム工学科や建築学科が進学してきます。
令和4年度(修了生数11)
進学5
- 大阪大学大学院3
- 徳島大学大学院
- 大阪公立大学大学院
就職6
- 須藤建設㈱
- 大成建設㈱
- 中央復建コンサルタンツ㈱
- ㈱横河ブリッジホールディングス
- 兵庫県庁
- 明石市役所
令和3年度(修了生数12)
進学6
- 京都大学大学院2
- 九州大学大学院2
- 東京工業大学大学院
- 神戸大学大学院
就職5
- ㈱J-POWFRハイテック
- 中央復建コンサルタンツ㈱
- 国土交通省
- 大阪府庁
- 神戸市役所
その他1
令和2年度(修了生数7)
進学1
- 京都大学大学院
就職6
- ㈱NTTフィールドテクノ
- ㈱横河ブリッジ2
- 兵庫県庁3
令和元年度(修了生数11)
進学4
- 大阪大学大学院2
- 東京大学大学院
- 京都大学大学院
就職7
- 大日本コンサルタント㈱
- 中央復建コンサルタンツ㈱
- 兵庫県庁2
- 明石市役所
- 神戸市役所
- 姫路市役所
明石高専の入学倍率
進学でも就職でも高い実績を誇る明石高専には、毎年多くの志願者が集まります。
ここでは、明石高専の入学志願者や倍率を確認しておきます。
令和5年度入試
令和5年4月の新入生の入試における志願者や倍率の状況です。
学科 | 募集人員 | 志願者(うち推薦) | 合格者(うち推薦) | 倍率 | 合格最低点 |
---|---|---|---|---|---|
機械工学科 | 40 | 54(49) | 40(21) | 1.35 | 474.5 |
電気情報工学科 | 40 | 86(65) | 42(21) | 2.15 | 482.5 |
都市システム工学科 | 40 | 55(43) | 43(21) | 1.38 | 437.5 |
建築学科 | 40 | 58(49) | 42(21) | 1.45 | 450.0 |
合格最低点も公表されているので、あわせてご紹介しますが、倍率が最も高い電気情報工学科が合格最低点も一番高くなっています。
一方で、2番目に合格最低点が高い機械工学科は、倍率では一番低いなど、必ずしも倍率どおりとは言えない面もありそうです。
令和4年度入試
令和4年4月の新入生の入試における志願者や倍率の状況です。
学科 | 募集人員 | 志願者(うち推薦) | 合格者(うち推薦) | 倍率 | 合格最低点 |
---|---|---|---|---|---|
機械工学科 | 40 | 63(53) | 40(21) | 1.58 | 470.5 |
電気情報工学科 | 40 | 66(52) | 42(21) | 1.65 | 489.5 |
都市システム工学科 | 40 | 39(36) | 42(21) | 0.98 | 449.5 |
建築学科 | 40 | 81(73) | 42(21) | 2.03 | 464.0 |
志願者は第一希望に基づく集計となっている一方で、合格者は第二志望、第三志望の受験生も含まれています。
そのため、志願者では定員に満たないようでも、合格者数では定員を満たしています。
合格最低点の順番は令和5年度と同様、電気情報工学科→機械工学科→建築学科→都市システム工学科となっています。
令和3年度入試
令和3年4月の新入生の入試における志願者や倍率の状況です。
学科 | 募集人員 | 志願者(うち推薦) | 合格者(うち推薦) | 倍率 | 合格最低点 |
---|---|---|---|---|---|
機械工学科 | 40 | 61(50) | 42(22) | 1.53 | 471.0 |
電気情報工学科 | 40 | 85(68) | 41(21) | 2.13 | 505.0 |
都市システム工学科 | 40 | 44(36) | 42(21) | 1.10 | 444.5 |
建築学科 | 40 | 68(54) | 41(21) | 1.70 | 463.0 |
合格最低点の順番は、この年度も変わりありません。
一方で志願者の人数や倍率は、同じ学科でも年度による違いがあります。
明石高専だけが特別ではない。高専の持つ魅力や底力を知ろう
ここまで、明石高専の進学実績や就職実績をもとに、明石高専とはどのような学校なのかを確認してきました。
非常に高い進学実績を誇る学校であることは、卒業後の進路を見れば分かりますが、単に進学だけでなく、就職についても高い実績を残していることが確認できました。
ただ、このような高い実績は、明石高専だけの特別なものではありません。
他の高専でも、高校とは違うカリキュラムの中で様々な経験を積んだうえで、進学や就職の結果を残しています。
早くから専門的な教育を受けられること、進学も就職も不利にならないことは、高専に進む大きな魅力といえます。
高校に進学すること、あるいは中高一貫校に進むのとは別に魅力的なルートがあることを知っておくといいでしょう。
なお、高専への入学にあたっては、入試当日の出来だけでなく、中学校での成績も大きなポイントとなります。
定期テストなどで常に良い成績を残せるよう、日頃から様々な努力が必要になるでしょう。
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