高専は5年制の学校なので、高専からの進学先は高校からの進学先とは大きく異なります。
中でも、高専独自の進学先となっているのが、高専の専攻科です。
この専攻科とはどのようなものなのでしょうか。
その成り立ちや専攻科進学の方法など、専攻科の概要をご紹介していきます。
専攻科の歴史
高専は創立以来、5年制の学校として教育を行ってきました。
ただ、中学校を卒業して入学し、5年の課程を終えて卒業すると、大学2年生あるいは2年制の短大を卒業するのと同じ時期となります。
高専を卒業すると「準学士」の学位を得ることができますが、4年制の大学を卒業した学生と比較した時に、さらに専門的な教育を求める声があったのです。
そこで、1992年、はじめて高専に専攻科が設置されました。
最初に高専が設置されたのは1962年のことですから、30年の時を経てそれまでの5年間の教育から、5年間+ 2年間の計7年間の教育を高専が行えるようになったのです。
現在では、系列の大学を持つ国際高専以外のすべての高専が専攻科を設置しており、より高度な研究を行っています。
専攻科の特徴
高専の専攻科は、多くの人にとってなじみのないものだと思います。
知名度がほとんどないため、どのようなところなのか、そこに行くとどのようなメリットがあるのか、想像もつかないと思います。
そこで、まずは高専の専攻科の特徴をいくつかあげてみましょう。
①高専卒業者を中心に受け入れている
高専の専攻科に進むのは、高専を卒業した学生がほとんどです。
短大を卒業した学生や専修学校を卒業した学生も専攻科に進むことはできますが、実際の入学者はそれほど多くありません。
②卒業すると大学卒業と同じ学位(学士)を受けられる
高専の専攻科を卒業すると、4年制の大学を卒業したのと同じく、学士の学位を得ることができます。
これによって、高専の専攻科を卒業した人は、大学を卒業した人と同じとみなされます。
③大学院に進学できる
専攻科を卒業すると、大学を卒業した人と同じ「学士」の学位を得られるため、大学院に進学できます。
大学院に入るには試験をクリアしなければなりませんが、試験に受かれば大学院に進むことができます。
専攻科の設置学科と定員
各高専に設置されている専攻科と、専攻科ごとの募集定員をご紹介します。
学校 | 専攻科 | コース等 | 募集定員 |
---|---|---|---|
函館 |
生産システム工学専攻 |
12 |
|
物質環境工学専攻 |
4 |
||
社会基盤工学専攻 |
4 |
||
苫小牧 |
創造工学専攻 |
20 |
|
釧路 |
建設・生産システム工学専攻 |
6 |
|
電子情報システム工学専攻 |
10 |
||
旭川 |
生産システム工学専攻 |
12 |
|
応用化学専攻 |
4 |
||
八戸 |
産業システム工学専攻 |
機械システムデザインコース |
7 |
電気情報システム工学コース |
7 |
||
マテリアル・バイオ工学コース |
7 |
||
環境都市・建築デザインコース |
7 |
||
一関 |
システム創造工学専攻 |
機械コース |
4 |
電気電子コース |
4 |
||
情報コース |
4 |
||
応用化学コース |
4 |
||
仙台 |
情報電子システム工学専攻 |
30 |
|
生産システムデザイン工学専攻 |
40 |
||
秋田 |
グローバル地域創生工学専攻 |
機械工学コース |
16 |
電気情報工学コース |
|||
物質工学コース |
|||
建設工学コース |
|||
鶴岡 |
生産システム工学専攻 |
機械・制御コース |
16 |
電気電子・情報コース |
|||
応用化学コース |
|||
福島 |
産業技術システム工学専攻 |
生産・情報システム工学コース |
16 |
エネルギーシステム工学コース |
|||
化学・バイオ工学コース |
|||
社会環境システム工学コース |
|||
ビジネスコミュニケーション学専攻 |
4 |
||
茨城 |
産業技術システムデザイン工学専攻 |
20 |
|
小山 |
複合工学専攻 |
機械工学コース |
20 |
電気電子創造工学コース |
|||
物質工学コース |
|||
建築学コース |
|||
群馬 |
生産システム工学専攻 |
||
環境工学専攻 |
|||
木更津 |
機械・電子システム工学専攻 |
8 |
|
制御・情報システム工学専攻 |
8 |
||
環境建設工学専攻 |
4 |
||
東京 |
機械情報システム工学専攻 |
8 |
|
電気電子工学専攻 |
8 |
||
物質工学専攻 |
4 |
||
長岡 |
電子機械システム工学専攻 |
12 |
|
物質工学専攻 |
4 |
||
環境都市工学専攻 |
4 |
||
長野 |
生産環境システム専攻 |
12 |
|
電気情報システム専攻 |
8 |
||
富山 |
エコデザイン工学専攻 |
24 |
|
制御情報システム工学専攻 |
8 |
||
国際ビジネス専攻 |
4 |
||
海事システム工学専攻 |
4 |
||
石川 |
電子機械工学専攻 |
12 |
|
環境建設工学専攻 |
8 |
||
福井 |
生産システム工学専攻 |
12 |
|
環境システム工学専攻 |
8 |
||
岐阜 |
先端融合開発専攻 |
20 |
|
沼津 |
総合システム工学専攻 |
環境エネルギー工学コース |
24 |
新機能材料工学コース |
|||
医療福祉機器開発工学コース |
|||
豊田 |
電子機械工学専攻 |
8 |
|
建設工学専攻 |
8 |
||
情報科学専攻 |
4 |
||
鈴鹿 |
総合イノベーション工学専攻 |
環境・資源コース |
24 |
エネルギー・機能創成コース |
|||
ロボットテクノロジーコース |
|||
舞鶴 |
総合システム工学専攻 |
電気電子システム工学コース |
16 |
機械制御システム工学コース |
|||
建設工学コース |
|||
明石 |
機械・電子システム工学専攻 |
8 |
|
建築・都市システム工学専攻 |
8 |
||
奈良 |
システム創成工学専攻 |
機械制御システムコース |
12 |
電気電子システムコース |
6 |
||
情報システムコース |
6 |
||
物質創成工学専攻 |
6 |
||
和歌山 |
メカトロニクス工学専攻 |
8 |
|
エコシステム工学専攻 |
8 |
||
米子 |
生産システム工学専攻 |
12 |
|
物質工学専攻 |
4 |
||
建築学専攻 |
4 |
||
松江 |
生産・建設システム工学専攻 |
8 |
|
電子情報システム工学専攻 |
12 |
||
津山 |
機械・制御システム工学専攻 |
8 |
|
電子・情報システム工学専攻 |
8 |
||
呉 |
プロジェクトデザイン工学専攻 |
40 |
|
徳山 |
機械制御工学専攻 |
4 |
|
情報電子工学専攻 |
4 |
||
環境建設工学専攻 |
4 |
||
宇部 |
生産システム工学専攻 |
12 |
|
物質工学専攻 |
4 |
||
経営情報工学専攻 |
4 |
||
阿南 |
創造技術システム工学専攻 |
機械システムコース |
16 |
電気電子情報コース |
|||
建設システムコース |
|||
応用化学コース |
|||
香川 |
創造工学専攻 |
機械工学コース |
6 |
電気情報工学コース |
6 |
||
機械電子工学コース |
6 |
||
建設環境工学コース |
6 |
||
電子情報通信工学専攻 |
18 |
||
新居浜 |
生産工学専攻 |
8 |
|
生物応用化学専攻 |
4 |
||
電子工学専攻 |
8 |
||
高知 |
ソーシャルデザイン工学専攻 |
16 |
|
久留米 |
機械・電気システム工学専攻 |
12 |
|
物質工学専攻 |
8 |
||
有明 |
生産情報システム工学専攻 |
12 |
|
応用物質工学専攻 |
4 |
||
建築学専攻 |
4 |
||
北九州 |
生産デザイン工学専攻 |
20 |
|
佐世保 |
複合工学専攻 |
16 |
|
熊本 |
電子情報システム工学専攻 |
24 |
|
生産システム工学専攻 |
24 |
||
大分 |
機械・環境システム工学専攻 |
8 |
|
電気電子情報工学専攻 |
8 |
||
都城 |
機械電気工学専攻 |
8 |
|
物質工学専攻 |
4 |
||
建築学専攻 |
4 |
||
鹿児島 |
機械・電子システム工学専攻 |
8 |
|
電気情報システム工学専攻 |
8 |
||
建設工学専攻 |
4 |
||
沖縄 |
創造システム工学専攻 |
機械システム工学 |
24 |
電子通信システム工学 |
|||
情報工学 |
|||
生物資源工学 |
|||
鳥羽 |
海事システム学専攻 |
4 |
|
生産システム工学専攻 |
8 |
||
広島 |
産業システム工学専攻 |
8 |
|
海事システム工学専攻 |
4 |
||
大島 |
海洋交通システム学専攻 |
4 |
|
電子・情報システム工学専攻 |
8 |
||
弓削 |
海上輸送システム工学専攻 |
4 |
|
生産システム工学専攻 |
8 |
||
東京都立産業技術 |
創造工学専攻 |
32 |
|
大阪公立大学 |
総合工学システム専攻 |
20 |
|
神戸市立 |
機械システム工学専攻 |
8 |
|
電気電子工学専攻 |
8 |
||
応用化学専攻 |
4 |
||
都市工学専攻 |
4 |
||
サレジオ |
生産システム工学専攻 |
14 |
|
近畿大学 |
生産システム工学専攻 |
18(平成31年度) |
専攻科への進学方法
専攻科に進学するには、試験を受けなければなりません。
専攻科の試験には、おもに3つのパターンがあります。
①推薦入試
5年制の高専の課程を終えた人が、学校長の推薦により受ける試験です。
他校からの推薦を断ることはできないと思われますが、現実的に推薦を受けるのは、専攻科の設置されている学校を卒業した学生がほとんどです。
②一般入試
推薦を得られなかった学生や、推薦入試に落ちた学生が、学科試験や面接を受けます。
学科試験は数学と英語という学校がほとんどですが、英語の点数はほぼすべて、TOEICの点数を換算して求めています。
③社会人入試
ほとんどの専攻科では社会人入試を実施しており、若干名の入学希望者を受け入れています。
入試の時期は学校により、あるいは試験の方法により異なります。
それぞれの学校が公表している入学要項などを確認しておきましょう。
専攻科からの進学と就職
専攻科を終えると、大学を卒業したのと同じ年齢となり、大学を卒業したのと同等の学位を得ます。
専攻科を終えてさらに勉強・研究するために大学院に進学する人もいれば、一般起業などに就職する人もいます。
おおよそ半々の割合で、就職する学生と進学する学生に分かれます。
大学院に進学する学生は、難関大学をはじめとする国公立大学の大学院に多く進学しており、その進学実績は非常に素晴らしいものとなっています。
一方、就職する学生も大手企業をはじめとして、それぞれの希望する就職先に進んでいます。
高専を卒業した学生も企業からの人気は高いのですが、専攻科を卒業した人はさらに人気が高く、求職者1人あたりの企業からの求人数は100倍を超えることもあります。
専攻科を卒業した学生は、就職先選び放題の状態といっても過言ではありません。
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