高専に通う学生はどれくらいお金がかかるのか①1年あたりの学費と生活費

高専の学費

高専に進学した学生は、実際にどれくらいの学費や生活費を負担しているのでしょうか。
また、高専生はアルバイトなどをする時間はあるのでしょうか。
何回かに分けて、高専生の気になるお財布事情を、「令和2年度 高等専門学校生生活調査結果」からご紹介します。

「高等専門学校生生活調査結果」とは

「高等専門学校生生活調査結果」とは、独立行政法人日本学生支援機構が高等専門学校生の生活状況を把握するための実施した調査です。
高等専門学校生に対する、生活支援事業の充実を図る基礎資料を得ることを目的としています。
令和2年度から本格的に調査が実施され、その調査の結果をまとめたものとなります。

令和2年度の調査は、以下のような概要で行われました。

  • 実施時期  令和2(2020)年11月
  • 調査対象  高等専門学校生のうち第4、5学年(全国20,689人から抽出された5,986人)
          国立高専については10/49、公立高専・私立高専については全数調査
  • 有効回答数 4,106人(回収率68.6%)

調査結果における注意点

この調査では、学費と生活費の2つの区分で、高専生がどれくらいの支出をしているのかを求めています。

学費→授業料、その他の学校納付金、修学費、課外活動費、通学費の合計

生活費→食費住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・し好費、その他の日常費(通信費を含む)の合計

学費の中には、学校に直接支払っていない通学費なども含まれているので、注意が必要です。

学生生活費の金額は1年あたり約74万円

令和2年度の学費と生活費を合わせた、1年間の「学生生活費」の合計は739,900円となっています。
この金額は、平成30年度に行われた前回調査における学生生活費793,100円より53,200円減少しています。
なお、令和2年度における学費は362,300円(平成30年度は392,500円で▲30,200円)、生活費は377,600円(平成30年度は400,600円で▲23,000円)となっています。

この金額は、前回調査より学費・生活費ともに減少しています。
学費の減少幅の方が大きくなっているのは、国立・公立と私立の人数比の違いによる可能性があります。
また、「課外活動費」は前回調査より59.3%も減少しており、この大幅な減少はコロナ禍による行動制限の影響を受けているものと思われます。

一方、生活費の減少は、コロナ禍の影響で支出を抑える必要があったものと思われます。
生活費の中では、「保健衛生費」のみが前回調査より12.7%増加している一方、「娯楽・し好費」は13.6%の大幅減となっています。

国立・公立・私立の学生生活費の違い

国公立高専と私立高専では、学費に大きな違いがあることは容易に想像がつきます。
生活費も含めた学生生活費にどの程度の違いがあるのか、この調査結果で明らかになっています。

国立高専公立高専私立高専
学費合計331,300円335,600円1,192,400円
生活費合計384,900円296,400円350,100円
学生生活費合計716,200632,000円1,542,500円
学生生活費(令和2年度「高等専門学校生生活調査結果」より)

学生生活費は、1年にかかる学費と生活費の合計額の目安となります。
学校の種類別にみていくと、国立が716,200円公立が632,000円私立が1,542,500円となっています。
このうち学費の金額は、国立が331,300円、公立が335,600円、私立が1,192,400円となっており、学生生活費の違いは学費の違いによるものであることが分かります。

国立高専公立高専私立高専
授業料219,400円199,400円1,025,600円
その他の学校納付金24,000円19,600円75,100円
修学費35,600円35,600円30,800円
課外活動費6,800円7,100円6,600円
通学費45,500円73,900円54,300円
学費合計331,300円335,600円1,192,400円
学費(令和2年度「高等専門学校生生活調査結果」より)

さらに細かく見ると、学費のうち授業料が国立は219,400円、公立は199,400円、私立は1,025,600円となっています。
この差が最も大きく、国公立と私立では学費が80万円以上の差になっています。

国立高専公立高専私立高専
食費106,400円71,000円79,200円
住居・光熱費41,000円4,100円46,500円
保険衛生費33,300円30,100円28,300円
娯楽・し好費83,600円86,600円90,300円
その他の日常費120,600円104,600円105,800円
生活費合計384,900296,400円350,100円
生活費(令和2年度「高等専門学校生生活調査結果」より)

生活費は、国立が384,900円、公立が296,400円、私立が350,100円となっています。
国立は自宅外から通う学生が多い傾向があり、公立や私立に比べると学費に含まれる通学費が低く、生活費に含まれる食費が高くなっています。

居住形態の違いによる学生生活費の違い

まずは、この調査の対象になった高専生の居住形態について確認しておきましょう。
高専に通う学生は、自宅から通うことができず、寮に入ったりアパートに下宿している学生が多いイメージがあります。
この調査の対象となった学生の居住形態別の割合は、以下の表のようになっています。

自宅学寮アパート(下宿)
国立高専①70.0%②24.2%③5.8%
公立高専④98.9%⑤-⑥1.1%
私立高専⑦85.4%⑧1.4%⑨13.3%
居住形態別の割合(令和2年度「高等専門学校生生活調査結果」より)

学校の設置者と居住形態の区分により、全部で9つの区分に分けることができます。
ただし、「⑤公立高専・学寮」のパターンは、公立高専で寮を設置している学校がないため、実際には8つのパターンのいずれかに含まれることとなります。

国立高専に通う学生のうち、約4分の1は寮に入っていることがわかります。
一方で、自宅から高専に通う学生が圧倒的に多く、国立高専では70%、私立高専では85%、公立高専では99%にもなります。

居住形態別・設置者別の学生生活費

学費と生活費を合計した学生生活費について、8つの区分のそれぞれの金額が公表されています。
先ほどの居住形態別・設置者別の表に対応する形で学生生活費を一覧表にすると、以下のようになります。

自宅学寮アパート(下宿)
国立高専①639,700円②837,100円③1,133,900円
公立高専④623,900円⑤-⑥1,381,500円
私立高専⑦1,481,800円⑧1,617,400円⑨1,927,900円
平均673,800円838,800円1,202,000円
居住形態別の学生生活費の額(令和2年度「高等専門学校生生活調査結果」より)

最も学生生活費が安いのは「④公立高専・自宅」であり、逆に最も学生生活費が高いのは「⑨私立高専・アパート」です。
同じ国立高専でも、①自宅と③アパートでは約50万円の差があります。
一方、①自宅と②学寮の差は20万円ほどとなっており、自宅外から通う場合でも、寮から通うのとアパートから通うのでは生活費に30万円程度の差があることが分かります。

また、私立高専の場合も、⑦自宅と⑨アパートでは50万円ほどの差があります。
こちらも、⑧学寮と⑨アパートの差は30万円ほどとなっており、寮に入ることによる恩恵は非常に大きくなっています。

居住形態別・設置者別の学生生活費の比率

居住形態別・設置者別の学生生活費を、「①国立高専・自宅」を1とした場合の支出の比率が公表されています。

自宅学寮アパート(下宿)
国立高専①1.00②1.31③1.77
公立高専④0.98⑤-⑥2.16
私立高専⑦2.32⑧2.53⑨3.01
居住形態別の学生生活費の比率(令和2年度「高等専門学校生生活調査結果」より)

自宅から高専に通う場合でも、⑦私立高専は①国立高専の倍以上となっており、その違いは学費にあることが分かります。
また、国立高専に通う場合でも、②学寮は①自宅の1.31倍、③アパートは①自宅の1.77倍となっており、生活費の支払いに大きな差があることが分かります。
最も金額の大きな「⑨私立高専・アパート」は、「①国立高専・自宅」や「④公立高専・自宅」の3倍以上となっています。

学生生活費は高専の設置者と居住形態による違いが大きい

今回は、学生生活費として、高専に通う学生の学費・生活費全般の金額を見てきました。
国立高専・公立高専と私立高専では、学費に大きな違いがあり、私立高専の場合は倍以上になることが分かりました。

一方、生活費は自宅から通う場合と、自宅外から通う場合ではやはり大きな差があります。
この違いは、国公立と私立の違いによる差ではないため、注意が必要です。

次回以降では、さらに細かくこれらの支出について分析していきます。

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