高専って聞いたことがあるけど、いまいちどんな学校か分からないという方は多いと思います。
また、現在中学生で来年以降に入試を控えている方は、少しでも情報がほしいと思っているのではないでしょうか。
高専に入りたいと思っている方も、高専ってどんなところだろうと思っている方も、まずは高専がどのような学校なのか知ることが大事です。
高校でも専門学校でもない独特の存在で、目立たないけど聞いたことのある人も多い、そんな高専の実態を知るきっかけにしてください。
高専の概要を知る
高専、正式には高等専門学校は、日本における高等教育機関の1つです。
その特徴は、大きく2つあります。
①中学校卒業後に入学する
②5年制の学校である
①の特徴から、高専に進む人は高校には進学しないことがわかります。
実際、高専に進学する人のほとんどは、中学校卒業後に高校ではなく高専に進学しています。
中学校を卒業する年齢は15歳なので、この年齢で高専に進むか、高校に進むかの人生の選択をしていることとなります。
考えてみれば、義務教育の期間を終えた後には、高校に進む以外にも数多くの選択肢があります。
就職する人もいますし、家業を継ぐという人もいるかもしれません。
進学する高校を選ぶこともまた、人生の選択の1つといえるのですが、高校に進学する人はそのような意識を持っている人は少ないかもしれません。
しかし高専に進む場合は、高専に在学している間に次の進路を決めるというわけにはいかないことが多く、高専への進学を決断した段階で、自身がどのような進路に進むのかを思い描いて入学してくる生徒が多いと言えます。
②の5年制の学校という点も、3年制の高校とは大きな違いがあります。
高専に進んだ人は、高校→大学と進学した人に当てはめて考えると、大学2年生を終えたタイミングで高専を卒業することとなります。
年齢的には、ちょうど20歳を迎える年で高専を卒業します。
学生数と男女比
高専の学生数を、すべての高専の入学定員から確認していきましょう。
高専は、その設置者によって国立・公立・私立の3種類に分類されます。
このいずれも、比較的少人数での教育を行っており、大学のような大規模な学校はありません。
また、高校の場合は、1学年の定員が300人〜400人という学校も多くありますが、高専はこれより少人数です。
現在あるすべての高専の入学定員は、1学年あたりの合計で10,465人となっています。
全部で57校の高専があるため、1校あたり・1学年あたりの平均人数は183人となります。
全国にある高専の中で最も定員多いのは、仙台高専・香川高専の280人です。
ただ、この両校はともに2つの高専を統合してできた学校であり、今でも実質的に2つの学校が1つの学校になっているような学校です。
この両校を除くと、最も定員の多い学校は神戸市立高専の240人であり、このほかの学校はすべて200人以下となっています。
なお、高専全体の学生の男女比を正確に把握することはできません。
学校ごとに学生数の男女比を公表している学校もありますが、男女比を公表していない学校も多くあるためです。
中には、入学願書への性別記入を廃止したため、入試の結果からは把握できないという学校もあります(舞鶴高専など)。
ただし、用意されている寮の定員などを見ても、男子学生の方が女子学生より多いのは間違いありません。
例えば明石高専のQ&A(https://www.akashi.ac.jp/admissions/qa.html)を見ると、女子学生の割合は入学者の約20%と紹介されています。
年度によって、あるいは学校によって違いはあると思いますが、これくらいの割合になっている学校が多いのかもしれません。
また、学科による男女比の違いにも傾向があります。
学科ごとに募集している場合、機械、電気、電子、情報、建築などに分かれています。
この中では、情報や建築などの学科が女子学生が多く、機械や電気・電子などの学科は女子学生の比率が低くなる傾向にあります。
例えば、奈良高専の令和4年度の入試状況(https://www.nara-k.ac.jp/enterschool/examinfo/pastapply/)によれば、物質化学工学科の入学者数42人のうち女子学生は23人となっており、女子学生が過半数を占めます。
一方で、機械工学科、電気工学科、電子制御工学科はいずれも42人程度の入学者数に対して女子学生数は8人であり、女子学生の割合は2割弱となっています。
設置された時期
高専が初めて設置されたのは、1962(昭和37)年のことです。
新制高校・大学の制度ができてから15年ほど経過しており、このタイミングで新しい教育機関が作られた形となります。
最初に高専が設置された1962年には、全国各地に国公立・私立あわせて19校が開校しました。
その後も1963年に16校、1964年に12校、1965年に8校と、かなりハイペースで高専が開校したのです。
その後、1967年には商船高専5校が開校(工業高専も1校開校)、1971年には電波高専3校が開校しています。
1974年に工業高専2校が開校した後は目立った動きはありませんでしたが、1991年と2004年に工業高専が新たに開校しています。
その一方で、高専の廃止の動きもあり、特に私立高専の多くは大学になることで、高専は発展的解消を行っています。
全国にある高専一覧
2022年8月現在、全国には57の高専が存在しています。
このうち工業高専は全部で53校あり、その内訳は国立高専47、公立高専3、私立高専3となっています。
また、国立の商船高専が全部で4校あります。
全国各地にある高専の一覧をご覧ください。
国立高専
学校名 | 所在地 | 開校年 | 設置学科 |
---|---|---|---|
函館 | 北海道函館市 | 1962 | 生産システム工学科 物質環境工学科 社会基盤工学科 |
苫小牧 | 北海道苫小牧市 | 1964 | 創造工学科 |
釧路 | 北海道釧路市 | 1965 | 創造工学科 |
旭川 | 北海道旭川市 | 1962 | 機械システム工学科 電気情報工学科 システム制御情報工学科 物質化学工学科 |
八戸 | 青森県八戸市 | 1963 | 産業システム工学科 |
一関 | 岩手県一関市 | 1964 | 未来創造工学科 |
仙台 | 宮城県仙台市・名取市 | 2009 (旧宮城高専1963、 旧仙台電波高専1971) | 総合工学科 |
秋田 | 秋田県秋田市 | 1964 | 創造システム工学科 |
鶴岡 | 山形県鶴岡市 | 1963 | 創造工学科 |
福島 | 福島県いわき市 | 1962 | 機械システム工学科 電気電子システム工学科 化学・バイオ工学科 都市システム工学科 ビジネスコミュニケーション学科 |
茨城 | 茨城県ひたちなか市 | 1964 | 国際創造工学科 |
小山 | 栃木県小山市 | 1965 | 機械工学科 電気電子創造工学科 物質工学科 建築学科 |
群馬 | 群馬県前橋市 | 1962 | 機械工学科 電子メディア工学科 電子情報工学科 物質工学科 環境都市工学科 |
木更津 | 千葉県木更津市 | 1967 | 機械工学科 電気電子工学科 電子制御工学科 情報工学科 環境都市工学科 |
東京 | 東京都八王子市 | 1965 | 機械工学科 電気工学科 電子工学科 情報工学科 物質工学科 |
長岡 | 新潟県長岡市 | 1962 | 機械工学科 電気電子システム工学科 電子制御工学科 物質工学科 環境都市工学科 |
長野 | 長野県長野市 | 1963 | 工学科 |
富山 | 富山県富山市・射水市 | 2009 (旧富山工業高専1964、 旧富山商船高専1967) | 機械システム工学科 電気制御システム工学科 物質化学工学科 電子情報工学科 国際ビジネス学科 商船学科 |
石川 | 石川県河北郡津幡町 | 1965 | 機械工学科 電気工学科 電子情報工学科 環境都市工学科 建築学科 |
福井 | 福井県鯖江市 | 1965 | 機械工学科 電気電子工学科 電子情報工学科 物質工学科 環境都市工学科 |
岐阜 | 岐阜県本巣市 | 1963 | 機械工学科 電気情報工学科 電子制御工学科 環境都市工学科 建築学科 |
沼津 | 静岡県沼津市 | 1962 | 機械工学科 電気電子工学科 電子制御工学科 制御情報工学科 物質工学科 |
豊田 | 愛知県豊田市 | 1963 | 機械工学科 電気・電子システム工学科 情報工学科 環境都市工学科 建築学科 |
鈴鹿 | 三重県鈴鹿市 | 1962 | 機械工学科 電気電子工学科 電子情報工学科 生物応用化学科 材料工学科 |
舞鶴 | 京都府舞鶴市 | 1965 | 機械工学科 電気情報工学科 電子制御工学科 建設システム工学科 |
明石 | 兵庫県明石市 | 1962 | 機械工学科 電気情報工学科 都市システム工学科 建築学科 |
奈良 | 奈良県大和郡山市 | 1964 | 機械工学科 電気工学科 電子制御工学科 情報工学科 物質化学工学科 |
和歌山 | 和歌山県御坊市 | 1964 | 知能機械工学科 電気情報工学科 生物応用化学科 環境都市工学科 |
米子 | 鳥取県米子市 | 1964 | 総合工学科 |
松江 | 島根県松江市 | 1964 | 機械工学科 電気情報工学科 電子制御工学科 情報工学科 環境・建築工学科 |
津山 | 岡山県津山市 | 1963 | 総合理工学科 |
呉 | 広島県呉市 | 1964 | 機械工学科 電気情報工学科 環境都市工学科 建築学科 |
徳山 | 山口県徳山市 | 1974 | 機械電気工学科 情報電子工学科 土木建築工学科 |
宇部 | 山口県宇部市 | 1962 | 機械工学科 電気工学科 制御情報工学科 物質工学科 経営情報学科 |
阿南 | 徳島県阿南市 | 1963 | 創造技術工学科 |
香川 | 香川県高松市・三豊市 | 2009 (旧高松高専1962、 旧詫間電波高専1971) | 機械工学科 電気情報工学科 機械電子工学科 建設環境工学科 通信ネットワーク工学科 電子システム工学科 情報工学科 |
新居浜 | 愛媛県新居浜市 | 1962 | 機械工学科 電気情報工学科 電子制御工学科 生物応用化学科 環境材料工学科 |
高知 | 高知県南国市 | 1963 | ソーシャルデザイン工学科 |
久留米 | 福岡県久留米市 | 1964 | 機械工学科 電気電子工学科 制御情報工学科 生物応用化学科 材料システム工学科 |
有明 | 福岡県大牟田市 | 1963 | 創造工学科 |
北九州 | 福岡県北九州市 | 1965 | 生産デザイン工学科 |
佐世保 | 長崎県佐世保市 | 1962 | 機械工学科 電気電子工学科 電子制御工学科 物質工学科 |
熊本 | 熊本県合志市・八代市 | 2009 (旧熊本電波高専1971、 旧八代高専1974) | 情報通信エレクトロニクス学科 制御情報システム工学科 人間情報システム工学科 機械知能システム工学科 建築社会デザイン工学科 生物化学システム工学科 |
大分 | 大分県大分市 | 1963 | 機械工学科 電気電子工学科 情報工学科 都市・環境工学科 |
都城 | 宮崎県都城市 | 1964 | 機械工学科 電気情報工学科 物質工学科 建築学科 |
鹿児島 | 鹿児島県霧島市 | 1963 | 機械工学科 電気電子工学科 電子制御工学科 情報工学科 都市環境デザイン工学科 |
沖縄 | 沖縄県名護市 | 2004 | 機械システム工学科 情報通信システム工学科 メディア情報工学科 生物資源工学科 |
鳥羽商船 | 三重県鳥羽市 | 1967 | 商船学科 情報機械システム工学科 |
広島商船 | 広島県豊田郡大崎上島町 | 1967 | 商船学科 電子制御工学科 流通情報工学科 |
大島商船 | 山口県大島郡周防大島町 | 1967 | 商船学科 電子機械工学科 情報工学科 |
弓削商船 | 愛媛県越智郡上島町 | 1967 | 商船学科 電子機械工学科 情報工学科 |
公立高専
学校名 | 所在地 | 開校年 | 設置学科 |
---|---|---|---|
東京都立産業技術 | 東京都品川区・荒川区 | 1962 | ものづくり工学科 |
大阪公立大学 | 大阪府寝屋川市 | 1963 | 総合工学システム学科 |
神戸市立 | 兵庫県神戸市 | 1963 | 機械工学科 電気工学科 電子工学科 応用化学科 都市工学科 |
私立高専
学校名 | 所在地 | 開校年 | 設置学科 |
---|---|---|---|
サレジオ | 東京都町田市 | 1963 | デザイン学科 電気工学科 機械電子工学科 情報工学科 |
国際 | 石川県金沢市 | 1962 | 国際理工学科 |
近畿大学 | 三重県名張市 | 1962 | 総合システム工学科 |
高専は中学卒業後から専門的な高等教育を受けられる
高専と高校の教育内容は、まったく異なります。
高専は早い段階から専門的な実験や研究を行い、専門分野の知識を身に着けることに主眼をおいています。
一方の高校のカリキュラムは、より上位の大学に進学するための教育といってもいいでしょう。
早い段階から専門教育を受けることができる高専と、大学への進学を主眼に置いた高校とは、それぞれ一長一短があるといえます。
早くから専門教育を受ける場合は、若くして専門的な知識を得ることができ、そのまま社会に出ることができます。
一方、高校では幅広い知識を得て、その中から自身の興味を持った分野の大学に進学することができます。
長い人生の中で、幅広い知識を得たうえで自身の進路を決めていくのも、決して無駄な時間ではありません。
コメント