全国にある高専を学校ごとにご紹介していきます。
今回は、高知県にある高知高専をご紹介します。
基本情報
学校名 | 高知工業高等専門学校 |
所在地 | 高知県南国市物部乙200番1 |
設立年度 | 1963(昭和38)年4月1日 |
設置学科 | ソーシャルデザイン工学科エネルギー・環境コースロボティクスコース情報セキュリティコースまちづくり・防災コース新素材・生命コース |
本科定員 | 1学年あたり160人 |
設置専攻科 | ソーシャルデザイン工学専攻 |
専攻科定員 | 1学年あたり16人 |
沿革
高知高専は、高知県南国市に1963(昭和38)年4月に設置された、国立の工業高等専門学校です。
高知高専はその成立に少し複雑な歴史を持っています。
1961(昭和36)年6月の学校教育法改正により、昭和37年度から高等専門学校設置の法令が交付されました。
これにあわせて、高知県では1961(昭和36)年7月に国立高等専門学校期成同盟会を東京で結成し、高知に国立の高専を開設するための運動を開始しました。
しかし、高専開設初年度に、高知県に高専を誘致できなかったのです。
そこで、高知県当局の斡旋により、翌年度に国立に移管することを前提として、1962(昭和37)年度に高知学園内に私立の高知工業高等専門学校が開設されました。
私立高知工業高等専門学校には、機械工学、電気工学、化学工学の3学科が設置され、各45人の学生が在籍したといいます。
その後、1963(昭和38)年4月に国立高知工業高等専門学校が開設され、私立高知工業高等専門学校に在籍していた1年生の全員が、2年生から国立高知工業高等専門学校の学生となったのです。
国立高知工業高等専門学校には、私立時代を引き継ぐ形で、機械工学科、電気工学科、工業化学科の3つの学科が設けられました。
1966(昭和41)年には土木工学科が設置され、4学科体制が構築されます。
1995(平成7)年には工業化学科が物質工学科に、1996(平成8)年には土木工学科が建築システム工学科に改組されています。
そして、2016(平成28)年にソーシャルデザイン工学科が設置され、それまでの4学科体制が1学科体制へと、大きく変更されました。
南国市はどんなところ?
南国市は高知県のほぼ中央、高知市に隣接しており、太平洋に面しています。
南国市の読み方は「なんこくし」であり「なんごくし」ではないので要注意です。
南国市は高知市の東隣にあり、JR土讃線のほか路面電車(とさでん)で高知市と結ばれています。
そのため、南国市の中心部と高知駅とは比較的移動しやすい環境にあります。
ただし、とさでんでの移動は時間がかかるので、その点は要注意です。
また、高知高専のある場所は、最寄駅からはかなり離れています。
南国市の中心駅である後免駅からは6キロ近くあり、最も近い駅からも4キロ程度あるので、駅から歩いて通うのは難しい環境となっています。
なお、南国市には高知龍馬空港があり、高知高専はその空港に隣接しています。
また高知高専には高知大学物部キャンパスも隣接しており、高知県内の高等教育機関の集積地域ともなっています。
高知龍馬空港は海に面した場所にあり、高知高専からも比較的簡単に海岸に行けます。
本科生の5年間の課程
ソーシャルデザイン工学科として毎年160人の学生が入学してきますが、1年生ではコースに分かれず、すべての学生で学級編成を行います。
3年生からは5つの専門コースに分かれて、専門分野を学びます。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
系に分かれない | エネルギー・環境コース | |||
ロボティクスコース | ||||
情報セキュリティコース | ||||
まちづくり・防災コース | ||||
新素材・生命コース |
学生情報
学生数(男女別)
学校要覧2024によれば、学生の人数や男女比は以下のようになっています。
1年 | 2年 | |||||
男子 | 女子 | 合計 | 男子 | 女子 | 合計 | |
ソーシャルデザイン工学科 | 123 | 53 | 176 | 119 | 42 | 161 |
3年 | |||
男子 | 女子 | 合計 | |
エネルギー・環境コース | 22 | 8 | 30 |
ロボティクスコース | 24 | 2 | 26 |
情報セキュリティコース | 40 | 9 | 49 |
まちづくり・防災コース | 25 | 14 | 39 |
新素材・生命コース | 26 | 19 | 45 |
4年 | 5年 | |||||
男子 | 女子 | 合計 | 男子 | 女子 | 合計 | |
エネルギー・環境コース | 19 | 6 | 25 | 29 | 2 | 31 |
ロボティクスコース | 14 | 2 | 16 | 11 | 3 | 14 |
情報セキュリティコース | 30 | 7 | 37 | 24 | 7 | 31 |
まちづくり・防災コース | 27 | 10 | 37 | 32 | 9 | 41 |
新素材・生命コース | 15 | 17 | 32 | 13 | 12 | 25 |
1年生・2年生はコースに分かれていませんが、いずれも女子の比率は30%前後となっています。
3年生以降はコース別にその人数が明らかになっていますが、コースにより人数にばらつきがあるのが分かります。
5つのコースの中では、ロボティクスコースの女子の比率が低く、新素材・生命コースの女子比率が高くなっています。
学生出身地
2024年度学校要覧によれば、本科生815人のうち高知県出身者が713人、高知県外出身者が91人、外国出身者が11人となっています。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
高知市 | 56 | 54 | 73 | 56 | 48 |
南国市 | 10 | 24 | 20 | 18 | 13 |
香南市 | 12 | 19 | 15 | 18 | 15 |
その他の高知県 | 43 | 44 | 68 | 48 | 59 |
高知県外 | 55 | 18 | 9 | 5 | 4 |
外国 | 0 | 2 | 4 | 2 | 3 |
高知県内の出身者は、最大都市の高知市と地元の南国市、そして南国市に隣接する香南市が多数を占めています。
ただ、それ以外の市町村からもまんべんなく学生が入学しています。
また、高知県以外の出身者も一定数いますが、中でも1年生の高知県外出身者が55人に急増している点が注目されます。
来年度以降もこのような傾向が続くと、志願者数や合否にも影響を与える可能性があります。
学生寮の入寮者
男子 | 女子 | 合計 | |
1年 | 84 | 33 | 117 |
2年 | 60 | 22 | 82 |
3年 | 49 | 22 | 71 |
4年 | 33 | 15 | 48 |
5年 | 49 | 12 | 61 |
合計 | 275 | 104 | 379 |
1年生の入寮希望者は、原則全員の入寮が許可されます。
2年生以上の学生は、入寮希望者の中から選考によって入寮が許可されます。
通学に便利とはいえない場所であるため、入寮者は多い印象となっています。
入試情報
推薦入試と一般入試
推薦入試の募集人員は、定員の80%程度となっており、全国の工業高専の中で最も高い割合になっています。
推薦入試の出願基準として、「第1学年及び第2学年が5段階評定で第3学年が10段階評定の場合、9教科の学習の記録の評定合計(満点180点)が120点以上、又は第1学年から第3学年までが5段階評定の場合、評定合計(満点135点)が90点以上」と定められています。
すべての学年で5段階評価となっている場合、各学年での評定は30点が目標となります。
30点をとるには、3科目で4をとり、それ以外の科目で3をとる計算となります。
推薦入試の出願基準 | 第1学年及び第2学年が5段階評定で第3学年が10段階評定の場合、9教科の学習の記録の評定合計(満点180点)が120点以上、又は第1学年から第3学年までが5段階評定の場合、評定合計(満点135点)が90点以上 |
一般入試では、学力試験として理科・英語・数学・国語・社会の5科目が実施されますが、各教科ごとの配点は公表されていません。
さらに、調査書全体あるいは教科ごとの点数も明らかにされていないので、注意が必要です。
入学志願者数
入学志願者数の推移は、以下のようになっています。
令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | |
ソーシャルデザイン工学科 | 188 | 197 | 202 | 212 |
わずかな期間のデータですが、年々志願者数が増加しています。
ただ、令和元年度には236人の志願者を集めていたこともあり、今後どのような傾向になるのか注目されます。
なお、これとは別にホームページから令和6年度の推薦入試の志願者数と合格者数を確認できます。
これによれば、令和6年度の推薦選抜志願者数は121人、推薦選抜合格者数が121人と、推薦入試を受験した人が全員合格した結果となりました。
ただこれは、推薦入試の志願者が募集人員を下回ったうえ、全員が推薦入試の出願基準を満たしていたためであり、毎年のことではありません。
卒業後の進路
高専の卒業生は就職、進学のいずれも選択できるので、その進路については学校や学科ごとの傾向を知ることが重要です。
高知高専の場合、令和5年度卒業生の進路は以下のようになっています。
卒業生 | 就職 | 進学 | その他 | |
エネルギー・環境コース | 22 | 19 | 2 | 1 |
ロボティクスコース | 19 | 16 | 3 | 0 |
情報セキュリティコース | 36 | 26 | 7 | 3 |
まちづくり・防災コース | 39 | 25 | 13 | 1 |
新素材・生命コース | 30 | 20 | 7 | 3 |
コースごとで比率の違いはありますが、学校全体としては就職の方が多くなっています。
就職
高専には、毎年多くの企業から求人が寄せられています。
高知高専の場合、令和5年度卒業生に対する求人数は以下のようになっています。
就職者数 | 求人数 | 求人倍率 | |
エネルギー・環境コース | 19 | 1,326 | 69.8 |
ロボティクスコース | 16 | 1,324 | 82.8 |
情報セキュリティコース | 26 | 1,175 | 45.2 |
まちづくり・防災コース | 25 | 1,023 | 40.9 |
新素材・生命コース | 20 | 955 | 47.8 |
どの学科も数多くの求人が寄せられ、求人倍率はいずれも40倍を超えています。
就職先の所在地としては、「京浜」つまり関東地方が最も多く、次に「京阪神」つまり近畿地方で、この両地域を合わせて50%を超えます。
進学
高知高専を卒業後に進学する学生の進学先は、以下のようになっています。
2020年3月 (令和元年度) | 2021年3月 (令和2年度) | 2022年3月 (令和3年度) | 2023年3月 (令和4年度) | 2024年3月 (令和5年度) | |
高知高専専攻科 | 25 | 17 | 23 | 21 | 12 |
長岡技術科学大学 | 2 | 4 | 2 | 1 | 1 |
豊橋技術科学大学 | 2 | 6 | 6 | 2 | 2 |
高知大学 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 |
徳島大学 | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 |
岡山大学 | 2 | 0 | 1 | 1 | 1 |
その他 | 16 | 14 | 11 | 12 | 14 |
最も進学者が多いのは高知高専専攻科であり、次いで長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学となっています。
それ以外の国公立大学については、特定の大学に多く進学してるわけではなく、これは地元の高知大学も例外ではありません。
ただ、多くの学生が国公立大学に進学していることに変わりはなく、私立大学に進む学生はごく少数となっています。
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