地方にある高専はどのような役割を果たすのか?

高専卒業後の進路

高専は埼玉県、神奈川県、山梨県、滋賀県、佐賀県を除く42の都道府県に国公立の工業高専が設置されています。
高専が人口の多い大都市圏に集中して設置されず、全国各地に点在しているのは、高専が発足した当時は高等教育への進学割合が低かったこと、経済の発展に技術者の養成は必要不可欠と考えられていたがその養成機関が不足していたことなどが理由とされています。
経済発展著しい時代を迎えるにあたって、各都道府県の中で工業の発展していた地域を中心に高専を設置し、地域での即戦力となる技術者を養成してきたのです。

しかし、高専が最初に開校した1962年から長い年月が経過し、日本の社会情勢は大きく変化しています。
大都市圏への一極集中や子供の人口減少など、設立当初には想定していなかった状況となり、地方の高専はどのような使命を負っているのでしょうか。

高専の現状

高専からは様々なデータが公表されています。
地方に多い高専は、どのような学生を受け入れ、その学生はどのような進路をとるのか、確認していきましょう。

入学者の出身地

国立高専には寮が設けられており、遠方からの学生も進学できる環境となっています。
しかし、高専に入学してくるのは中学校を卒業したばかりの若者であり、入学生の多くは地元出身者となっています。

「学校要覧」などの名称で各学校が作成している刊行物には、さまざまなデータが掲載されています。
その中から、学生の出身地のデータを公表している国立高専について、県外出身者の割合をグラフにしました。
なお、本科5学年の学生について集計している学校が多いのですが、各学校の公表データは一律ではないため、新入生についてのみ公表している学校、専攻科を含めた学校もあります。

高専本科生のうち県外出身者の割合(令和6年度)

県外出身者の割合が50%を上回っているのは、東京高専舞鶴高専です。
ほかにも30%を超えている学校がいくつかありますが、これらの多くは県外から通学しやすい環境にある、あるいは高専のない県に隣接していることが高い割合となっている理由です。
学校別にみると県外出身者の割合が10%以下となっている学校が多く、学生数でも全体の90%程度は地元の都道府県の出身者が占めています。

卒業生の進路(進学)

高専を卒業した学生の半数程度は、大学や高専の専攻科に進学します。
高専の専攻科の定員は、本科の1割程度となっている学校が多いので、専攻科に進学する1割程度は進学してもそのまま高専に残る形となります。

一方、大学に編入学する学生の主な進学先は国公立大学となっています。
すべての都道府県に必ず国立大学があるため、地元の国公立大学に進学する学生も多いのですが、より高みを目指して東大・京大をはじめとする旧帝大などへの進学を目指す人もいます。
地方の高専を卒業した学生が旧帝大に進む場合、その学生は必然的に都市部に流出してしまうこととなります。

もっとも、高専の専攻科や地元の国公立大学に進学したとしても、卒業して就職する時にはさらに都市部への流出が起こります。
このことは高専の本科を卒業した学生の就職状況をみても明らかです。

卒業生の進路(就職)

高専を卒業した学生は、若いうえに企業からの評価も高く、数多くの企業から求人が寄せられています。
その結果、地方の高専を卒業した学生も、多くが都市部にある企業に就職しています。
卒業生が就職する際に、どの地域に就職しているのかを公表している学校があるので、そのデータを確認していきましょう。

県外に就職した人の割合(令和6年度卒業生)

進学者と就職者の人数の内訳は、すべての高専が公表しています。
しかし、県外に就職した人の割合を公表しているのは、ほとんどが地方にある高専です。
就職した人のうち県外就職者数の割合は、ほとんどの学校で60%を上回っており、中には90%を超えている学校もあります。
また、進学も含めた卒業生全体のうち県外に就職した人の割合も、学校によっては半数を超えており、就職する際には東京や大阪を中心とした都市部に卒業生が流出していることが分かります。

高専を卒業しても地元に就職先がない

高専を卒業した学生の多くは、都市部やその周辺にある企業に就職しています。
高専には多くの求人が寄せられるので、都市部に出たい人も地元に残りたい人も、それぞれの希望をかなえられるはずなのですが、地方にある高専の場合、多くの学生が県外への就職を選んでいることになります。

これは、地方の高専を卒業しても地元には魅力的な就職先が少ないことが影響しています。
高専の卒業生の多くが大企業に就職していますが、地方にはそのような企業が多くありません。
そのため、給与や休暇などが好条件で、より魅力的な仕事ができそうな大企業を選択する学生は、都市部に出ていく結果になるのです。
本当は地元に残りたいと考える人も、その思いはかなわず、地方で活躍する技術者を養成するという高専設立の理念は、本来の理想とする結果になったとはいいがたい状況となっています。

高専の入試における取り組み

就職の際に地方に残ることが難しい状況にあるとしても、高専としては若い学生を地元で教育していきたいという思いがあるはずです。
そこで、地方出身の学生が地方で活躍してもらえるよう、高専としても取り組みを行っています。
中でも舞鶴高専では、独自の入試を実施しています。

舞鶴高専では、推薦入試に相当する特別選抜で一般推薦型と地域創生型の2つのタイプの試験を実施しています。
このうち地域創生型は、舞鶴高専のある北近畿やその周辺地域、または志願者の出身地域の産業の担い手となる意欲がある人を対象としたものです。

特徴は、舞鶴高専のある北近畿だけではなく、志願者の出身地域を含めていることです。
都市部にある大企業の一員ではなく、地域の産業の担い手を養成するのが高専の役割だという考えに基づき、画一的でない学生を確保する手段となっています。

なお、卒業した時に特定の地域の企業に就職しなければならないといった制約はないようです。
そのため、実効性に疑問を持つ方もいるかもしれませんが、結果どうなったとしても高専を受験する中学生が、地域創生という考え方に触れるきっかけを作っているのが素晴らしいことだと思います。

全国にある高専の強みを利用しよう

高専に行きたいと考えている中学生やその親御さんの多くは、地元の学校をターゲットにしていると思います。
当然、地元の学校が一番安心して通えますし、経済的な負担も少なく済みます。
しかし、同じように見える高専も学校ごとに特徴があるうえ、入学試験の方式や点数の配分などの違いもあります。
そのため、絶対に高専に行きたいという人は、地元の学校だけでなく全国各地にある高専も調べてみると意外な発見があるかもしれません。

高専に行き、その高専のある地域で活躍するか、あるいは地元に戻るか、さらには東京などの都市部に行くかはすべて自分しだいです。
進学か就職かの選択もできますし、自分の可能性を大きく広げられる高専への進学をぜひ前向きに検討していきましょう。



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