2023年に約20年ぶりの新たな高専として徳島県に開校した神山まるごと高専ですが、第一期生・第二期生ともに、入試は非常に高い倍率となりました。
これまでは知名度が低いことに大きな課題がありましたが、関係者の取り組みや在校生の活動が注目されるなど、次第に全国的に広く知られるようになっています。
この記事をご覧の方は、神山まるごと高専に何らかの興味を持っている方が多いかと思いますが、まだ分からないことも多く、不安という方もいるかと思います。
今回は、神山まるごと高専の第三期生となる2025年度(2025年4月入学)入試の要項を確認し、どのような入試が実施されるのか、その中身を確認していきます。
入試要項2025の昨年との変更点
神山まるごと高専の2025年度入試要項が、2024年7月1日に公表されました。
昨年は2023年9月17日に入試要項が公表されているので、それより2か月以上早いタイミングでの公表となりました。
昨年の入試との大きな違いは、志望理由書が新設されたこと、そして数学検定優遇制度が導入されたことです。
またプレエントリー制となり、入試手続きの流れが昨年までとは異なる点に注意が必要となります。
志望理由書
昨年度の出願書類の中には、調査書や推薦書が含まれていました。
これらの書類は2025年度入試においても必要ですが、これとは別に志望理由書も提出しなければならないとされています。
神山まるごと高専は入試にあたってマッチングを重視するので、出願者の志望動機や志望理由を確認するため、新たに志望理由書が設けられたと考えられます。
合否判定においては、志望理由書にも配点が決められており、点数化されます。
志望理由書は、後ほど紹介するA方式とB方式で必ず提出しなければならないものなので、どのような形式になるのか、何を記載するのか、早めにチェックしておくようにしましょう。
数学検定優遇制度
神山まるごと高専の入試でははじめて、実用数学技能検定(数検)の資格保有者に対して、数学を受験したうえで一定の点数が保証される制度が導入されます。
対象となるのは数検準2級以上の取得者であり、準2級の場合は70%、2級以上の場合は90%の得点が保証されます。
実際には数学の学力試験を受験し、数検からの換算点数と実際の得点のいずれか高い方が採用されます。
プレエントリー制
入学試験に出願する際には、まずプレエントリーしなければならないとされました。
プレエントリーの開始は2024年10月1日であり、プレエントリーした人から順に受験番号が発行されます。
また、プレエントリーすると一次試験の出題範囲が通知されます。
プレエントリーが遅くなるほど、出題範囲の通知が遅くなるので、試験勉強の遅れにつながりかねません。
神山まるごと高専の求める学生像(アドミッションポリシー)
入試要項には、最初にアドミッションポリシーが記載されています。
神山まるごと高専が公表したアドミッションポリシーには、受け入れる学生像について、以下の5つをあげています。
- モノづくりに興味や関心がある人
- 多様な価値観を受け入れ、自分の意見を伝えられる人
- 情報を適切に処理する思考力がある人
- 正解のない問いに対して、独自の解を出せる人
- 必要な学習を続ける意欲があり、学んだことを活かせる人
この内容は昨年と違いはないので、学校として求める学生像にも大きな変化がないといえます。
神山まるごと高専は「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てるとしています。
「コトを起こす」という表現からは、単に学校で学んだことを覚えてアウトプットするだけでなく、自身の考え方を加え、自分の意見として人に伝えられることが求められているといえます。
これまでの高専では、卒業後の進路は進学と就職が半々くらいとなっていました。
しかし、神山まるごと高専では、起業する意欲のある学生を後押ししてくれる体制となっており、この考え方がアドミッションポリシーに表れているといえます。
一方で、大企業に就職をしたいとか、より良い大学に進学したいということに主眼を置いている学生は、神山まるごと高専の考え方にはあわない部分も大きく、仮に学力試験でいい結果が出たとしても、合格にならない可能性があります。
神山まるごと高専もホームページの中で、入試ではマッチングを重視しているとしており、学校の理想とする考え方に近い学生が選抜されるはずです。
この学校の理想に無理にあわせる必要はなく、自然に共感できる人がより合格に近づくこととなります。
2025年度入試の概要
神山まるごと高専は、2025年度入試が3回目の入試となります。
どのような入試が実施されるのか、まずは概要からご紹介します。
マッチング重視
昨年度の入試でも強調されていましたが、神山まるごと高専の入試はとにかくマッチングが重視されます。
神山まるごと高専が求める学生像は明確になっており、その学生像にあわなければ、たとえ学業成績が優秀でも入学できない可能性があります。
神山まるごと高専がマッチングを判断する方法として、以下の10の項目をあげています。
- 志望理由書
- 調査書
- 推薦書
- 課題レポート
- 学習プロセス
- 学力試験
- 個別課題
- 適性検査
- ワークショップ
- 面接
ただし、すべての志願者にこれらの項目がすべて該当するわけではなく、試験の方式により必要なものは変わるので、それぞれの試験方式を確認するようにしましょう。
3つの方式で実施される
神山まるごと高専の2025年度入試では、昨年度と同様、A方式、B方式、C方式の3つの方式で学生を選抜します。
- A方式
A方式の特徴は、すべての評価項目の総合点で、学校と志願者のマッチ度をはかることです。
突出して得意な分野がなくても、全体的な得点が上位に入れば入学が認められます。
具体的な試験の内容については、後ほどご紹介します。
- B方式
B方式の特徴は、各項目の評価の中で秀でた部分を突出点とし、学校とのマッチ度をはかることです。
多少苦手な分野があったとしても、それを補って余りある得意分野がある学生が合格しやすくなります。
- C方式
C方式は、A方式とB方式のいずれかの一次試験に合格した生徒だけが受験できます。
再度試験を行うことで、当初A方式・B方式を受験した時と比較してどれだけ能力が伸びたのか、その学習力をはかることが目的です。
A方式
ここからは、それぞれどのような内容の試験が実施されるのか、またその試験の時期や定員など具体的な決定事項についてご紹介していきます。
まずは、A方式として実施される試験についてご紹介します。
A方式の試験の詳細は、以下のようになっています。
募集人員 | 約28名 |
検定料 | 25,000円(B方式と併願時は40,000円) |
出願時期 | 2024/11/1(金)10時~11/10(日)19時 |
一次試験日程(オンラインで実施) | 2024/11/16(土) |
一次試験合格発表 | 2024/11/22(金) |
二次試験日程 | 2024/11/30(土) |
二次試験合格発表 | 2024/12/9(月) |
出願する書類は、志望理由書、調査書、課題レポートです。
このうち志望理由書と調査書は、B方式と併願する場合、共通のものを使用することとされています。
一次試験では数学と国語の学力試験が行われ、オンラインでの試験となります。
また数学は数学検定優遇制度の対象となります。
二次試験はワークショップと面接が実施され、B方式と同様の内容となっています。
B方式
B方式の試験の詳細は、以下のようになっています。
募集人員 | 約12名 |
検定料 | 25,000円(A方式と併願時は40,000円) |
出願時期 | 2024/11/1(金)10時~11/10(日)19時 |
一次試験日程(オンラインで実施) | 2024/11/16(土) |
一次試験合格発表 | 2024/11/22(金) |
二次試験日程 | 2024/11/30(土) |
二次試験合格発表 | 2024/12/9(月) |
出願する書類は、志望理由書、調査書、推薦書、課題レポートです。
このうち志望理由書と調査書は、B方式と併願する場合、共通のものを使用することとされています。
推薦書以外は試験日程や書類にA方式と大きな違いはありません。
B方式でも学力試験が実施され、数学検定優遇制度の対象にもなっています。
C方式
C方式の試験の詳細は、以下のようになっています。
募集人員 | 若干名 |
検定料 | 25,000円 |
出願時期 | 2024/12/9(月)10時~12/19(木)19時 |
試験日程 | 2025/1/11(土) |
合格発表 | 2025/1/16(木) |
C方式はA方式・B方式のいずれかの一次試験に合格したものの二次試験で不合格になった人が出願できます。
出願する書類は個別課題だけとなっています。
試験の性格としては、一度不合格になった人が再度試験を受け、学習力についてマッチングをはかるものとなっています。
注意点①試験方式にあわせた書類を準備する
神山まるごと高専の入試を受ける際は、A方式とB方式のいずれかあるいはその両方の試験を受けます。
国立高専の入試は、高専機構の作成した5教科の学力試験で実施されますが、神山まるごと高専の試験の内容は、他のどの学校とも違う、かなり独自のものとなっています。
そのため、基礎学力は不可欠ですが、学力だけを高めれば合格できるものではありません。
特に注意すべきなのは、志望理由書、調査書、推薦書、課題レポートの4種類の書類の作成です。
それぞれの書類には、試験の方式に応じた配点が定められています。
出願書類の配点は以下のとおりです。
A方式 | B方式 | |
志望理由書 | 50点 | 20点 |
調査書 | 20点 | 20点 |
推薦書 | - | 40点 |
課題レポート | 50点 | 40点 |
配点が定められており、合否に直接影響すると分かっている以上、単に書類を作成して提出すれば、それでいいというものではありません。
大切なのは、自身の考えをしっかりと持つことができているか、そしてそれを書類の中に表現できているかです。
特に課題レポートは、何かを調べれば正解にたどり着くものではないと思われるので、自分でいろいろ考えることが大切です。
なお、課題レポートの内容は10月1日(火)にホームページで公開されます。
公開されたら、早目にチェックして課題に取りかかるようにしましょう。
注意点②試験の日程はかなり早い
神山まるごと高専に入りたいと考えている人は、試験の日程に注意しましょう。
他の高校入試や高専入試に比べると、神山まるごと高専の入試は、かなり日程が早くなっています。
そのため、うっかり出願期間を過ぎてしまうといったことにならないよう注意しましょう。
またB方式の出願に必要な推薦書は、本人や二親等内の家族などを除き、第三者に作成してもらう必要があります。
早めに準備して、作成を依頼するようにしておかないと、出願に間に合わないといったことにもなりかねません。
他の中学3年生が受験シーズンに本格突入する前に試験本番に臨まなければならない状況は、精神的にはつらいかもしれません。
しかし、神山まるごと高専はそのような状況を乗り越えて入る価値のある学校だということを理解できる学生を求めており、その点もまた入学にあたって大きく考慮されているといえます。
【まとめ】他の入試とはまったく異なる神山まるごと高専の入試は準備と思考が大切
神山まるごと高専の入試は、他の高校や高専の入試とはまったく異なります。
偏差値や内申点の高い人が選抜される試験ではなく、学校の掲げるアドミッションポリシーとマッチする学生が入学を許可されます。
入学試験はかなりの高倍率になることが予想されますが、出願書類を作成する段階から、実質的な試験は始まっています。
神山まるごと高専のアドミッションポリシーを理解し、より良い準備をできた人が突破できるでしょうから、様々なことに目を向けて自分なりにいろいろ考えてみましょう。
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