高専を卒業した後、高専の専攻科や大学に進学する人と、就職する人がいます。
高専の場合、進学と就職のいずれかが極端に多いことはなく、進学する人もいれば就職する人もいるといった感じで、自身の進路を選択しています。
高専に行く前の段階では、あるいは高専に特段の興味がない人にとっては、大学に行くチャンスがあるならば大学に行った方がいいと考えるかもしれません。
しかし実際には、高専を卒業して就職する人も多くいます。
高専を卒業して就職するのはなぜなのでしょうか。
高専(本科)から就職するメリット
高専の本科を卒業して大学に行かずに就職するのは、いくつかのメリットがあるからと考えられます。
そこで、高専から就職するメリットをご紹介します。
大企業に就職できる
高専から就職する場合、その就職先がどのような企業なのか気になる方もいるでしょう。
特に大企業と中小企業の区分で考えた場合に中小企業への就職が中心なのであれば、大学を卒業してから就職する方がいいと考える方も多いと思います。
実際に高専から就職する際に、どれくらいの規模の企業に就職しているのか、公表している高専があります。
例えば鶴岡高専が令和6年度卒業生の就職先について公表したデータでは、就職先の事業所の人数は以下のようになっています。
500人以上 | 100~500人 | 100人未満 | 官公庁 | |
---|---|---|---|---|
機械コース | 11 | 6 | 0 | 0 |
電気・電子コース | 16 | 4 | 1 | 0 |
情報コース | 20 | 5 | 2 | 0 |
化学・生物コース | 19 | 4 | 2 | 1 |
人数だけがすべてではありませんが、500人以上の大規模な事業所に就職している人が、いずれのコースも大半を占めていることが分かります。
このデータからも分かるように、高専からの就職先としては大企業やその関連企業が多くなっています。
多くの求人先から選択できる
高専には、全国各地の企業から多くの求人が寄せられます。
多くの高専では、学校に寄せられた求人数や求人企業数を公表しているので、気になる高専や学科に対する求人の状況を確認しておきましょう。
卒業生 | 就職者数 | 求人数 | 倍率 | |
---|---|---|---|---|
機械システムデザインコース | 38 | 23 | 634 | 27.57 |
電気情報工学コース | 44 | 21 | 656 | 31.24 |
マテリアル・バイオ工学コース | 34 | 12 | 438 | 36.50 |
環境都市・建築デザインコース | 41 | 22 | 490 | 22.27 |
また、就職先の企業は、その高専がある地元の企業に限りません。
むしろ、地方の高専からも、東京などに本社を置く企業に多くの学生が就職しています。
卒業生 | 就職者数 | 県外就職者数 | 県外就職者数の割合 | 関東地方への就職者数 | |
---|---|---|---|---|---|
機械システムデザインコース | 38 | 23 | 21 | 91.30% | 16 |
電気情報工学コース | 44 | 21 | 18 | 85.71% | 15 |
マテリアル・バイオ工学コース | 34 | 12 | 10 | 83.33% | 10 |
環境都市・建築デザインコース | 41 | 22 | 20 | 90.91% | 20 |
八戸高専の場合、令和6年度卒業生の就職者数78人のうち9割近い69人が青森県外へ就職しています。
特に関東地方への就職者数は61人(78.21%)と圧倒的です。
大企業が多く立地していて、青森県からも新幹線で行きやすい関東地方への就職者が多いことが読み取れます。
地方にある高専に進学する場合、知名度などの面で心配な方もいるかもしれませんが、そのことはまったく不利にはならないといえるでしょう。
一方で、地元に残って就職したいと考える方にとっては、地元に有力な就職先が少ないといった別の悩みを抱えることになるかもしれません。
学校からの推薦で就職できる
高専から就職する場合に、何度も面接や試験を受けて、他の受験者との競争に打ち勝つ必要があると思われるかもしれません。
そのような形で就職先を決定する方もいますが、全体で見れば少数といえるかもしれません。
高専生の就職活動については、多くの企業で学校推薦の形をとっており、ほとんどの高専生は学校からの推薦を得た時点で就職先が決定します。
大学・大学院から就職する学生の場合も、理系の学生は学校や研究室に寄せられる求人に対して、学校や担当教官の推薦により就職先が決定することがあり、高専生についてもそのような形になっています。
高専(本科)から就職するデメリット
高専から就職するメリットはいくつかありますが、デメリットもあります。
高専の本科を卒業して就職するのと、大学を卒業して就職するのとではデメリットの方が差が大きいので、これらの点は慎重に考える必要があります。
給料が安い
高専の本科を卒業して就職する場合、多くの企業では大学卒業後に就職する学生とは区分しており、短大卒の学生と同じ条件としています。
企業名 | 大学卒 | 高専卒 | 差額 |
---|---|---|---|
パナソニック | 265,000 | 233,000 | 32,000 |
ダイキン | 290,000 | 260,000 | 30,000 |
日東電工 | 260,000 | 223,000 | 37,000 |
富士電機 | 269,000 | 232,000 | 37,000 |
大学卒業の場合と比較すると、月々の給料の金額は少なくなり、勤続年数が経過してもこの差は簡単には埋まりません。
むしろ、給料の金額の差が開くこともあるでしょう。
職種が限定される
大学を卒業して入社する場合と、高専を卒業して就職する場合では、職種が同じとは限りません。
理系の学生に人気のある研究職は、学士(大学卒業)でも難関であり、修士(大学院修了)以上でなければ難しいのが現実です。
そのため、高専を卒業して就職しても、希望する職種の業務を任されるかどうかは分かりません。
一方で、希望する職種の業務を任されるかどうかは、大学を卒業したからといって大きく変わるものではありません。
ただ、研究職を高専卒で任されるのはまれであり、企業によっては将来的なものも含めて、そのような配属がないことも考えられるので、注意しましょう。
これから高専に進学を考えている人はどうする?
これから高専に進学したいと考えている中学生やその親御さんは、高専について調べる中で就職に強いというメリットを知っている方が多いと思います。
実際に高専に進学したいと考える動機の1つとして、高専を卒業したらいい会社に就職したいというものもあるでしょうし、そのことは十分に高専に進学する理由になります。
ただ、高専に進学したからといって、必ず理想的な就職先に巡り合えるとは限りません。
個々の企業としてみた場合、今の段階でいい就職先と思っていても、5年後も同じようにいい就職先といえるかどうかは分かりません。
そのため、高専に進学した後に就職希望から進学希望に変更する可能性は十分にあります。
高専を卒業して就職するにしても進学するにしても、多くの人は学校からの推薦で進路を決定しています。
そのため、高専で大事なのは本番の試験で一発勝負に勝つための訓練をすることではなく、日々の積み重ねをコツコツすることです。
高専での学習や研究の積み重ねによって、自身の進路をより良いものとすることができます。
就職と進学のどちらかに絞る必要はない
高専を卒業すれば、最終的に進学するか就職するかのいずれかを選択することとなります。
しかし、高専に入る前からどちらかに重点をおく必要はないですし、高専に入ってからもいろいろな可能性を探るのが大切です。
高専を卒業してから就職するか進学するか、あるいはもっと別の道を選択するのかを決めるのは自分自身です。
高専卒業後は様々なチャレンジができるので、自身の将来について可能性を狭めるのではなく、広い視野を持って取り組むようにしましょう。
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