一般入試と推薦入試は別物?名古屋市の教育長が提起する問題は高専入試ですでに始まっている

高専に入学したい

高専の入試は高校の入試と同じく、中学生が受験します。高校入試では、中学校で作成された調査書が合否の判定に使用されますが、どのように調査書を利用するのかをめぐって、話題になることがあります。

そのような中で、調査書の利用方法をめぐりニュースとなったことがあったので、ご紹介します。

中学校で作成する調査書は一般入試には不要とする意見がある

2022年10月のことになりますが、名古屋市の坪田知広教育長が、高校入試における調査書の利用方法について問題提起するニュースが報道されていました。

このニュースは、これまで高校入試において利用されてきた調査書について、高校入試でどのように利用するか、そして中学校で作成する調査書にはどのような項目を記載すべきかを問う内容です。
従来、中学校で作成するには生徒会や学校行事に関する「特別活動の記録」や、学校の出席状況を表す「出欠の記録」などを記載する欄が多くを占めています。
この調査書を高校入試にどこまで活用するのか、これまで話題にはなってもそれほど議論されることはありませんでした。

このニュースに登場した名古屋市の坪田知広教育長は、調査書に記入する内容はシンプルな9教科の評定のみにしてはどうかと発言しています。
すでに広島県では調査書の改革が進められ、検討中の調査書の様式は9教科の評定のみと、かなりシンプルなものとなっています、
もともとは中学校の教員の負担軽減のために始められた改革ですが、この広島県での改革をモデルに、名古屋市でも同様のシンプルな調査書を目指す方向性が示されています。

このニュース自体は、名古屋市での入試改革に関するものですが、実はこの坪田知広教育長は、2022年6月まで国立高専機構の理事を務めていました。
そして、理事時代には国立高専における入試で調査書の簡素化を主導してきた人物なのです。

高専入試の推薦入試では調査書が重要

高専の入試のうち推薦入試については、中学校から提出される調査書に基づいて、合否判定が行われます。
推薦入試で用いる調査書の内容は、評定だけの学校もあれば、それ以外の項目を合否判定に用いる学校もあります。
推薦入試では、学校ごとに定める募集要項などで、どのような人物を迎え入れたいかという学校の求める人物像が明らかになっているので、推薦入試の出願資格がどのように定められているか、いくつか確認しておきましょう。

函館高専

「令和5年度学生募集要項」 推薦による選抜の出願資格

「推薦による選抜」に出願できる者は、次の(1)~(3)の全ての条件を満たす者で、かつ、合格した場合には必ず入学する者とします。
(1)令和5年3月に中学校卒業見込みの者、義務教育学校卒業見込みの者、中等教育学校前期課程修了見込みの者又は文部科学大臣が中学校の課程と同等課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を修了見込みの者
(2)本校への入学意志が固く,技術者となるにふさわしい者
(3)第3学年の必修教科(外国語(英語)を含む)の5段階評定のうち,国語,数学,理科,社会,外国語(英語)の5教科がすべて3以上で,かつ,必修教科の合計が33以上の者

この出願資格によれば、入学意志が固く技術者となるにふさわしい者で、合格した場合には必ず入学すること、そして学校が定める内申点の基準を満たしていることが求められています。

豊田高専

「令和5年度学生募集要項」 推薦による入学者の選抜(推薦選抜)の出願資格

推薦入学を志願できる者は、学業・人物とも優秀で、次の各条件に該当し、中学校長の推薦を得た者とします。
① 令和5年3月に中学校を卒業見込みの者若しくはこれに準ずる学校を卒業見込みの者若しくは義務教育学校を卒業見込みの者若しくは中等教育学校の前期課程を修了見込みの者又は文部科学大臣が中学校の課程と同等の課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を修了見込みの者
② 当該学科を志望する動機・理由等が明確・適切である者
③ 第3学年の成績が学年の上位15%以内の者又は生徒会活動、部活動、学外活動(ボラン ティア活動含む)、英語・数学・漢字検定取得、海外生活経験等に優れた実績を有する者

函館高専とは違い、評定ではなく3年生の成績が学年の上位15%以内であることが、条件の1つとなっています。
また、成績の基準とは別に、生徒会活動や部活動、学外の活動、英検などの検定取得、海外生活経験などの実績があれば、成績の条件を満たさなくても出願資格を得られます。

鹿児島高専

「令和5年度入学者募集要項」 推薦による入学者の選抜の出願資格

令和5年3月に、中学校を卒業見込みの者、義務教育学校後期課程を卒業見込みの者、中等教育学校の前期課程を修了見込みの者、または文部科学大臣が中学校の課程と同等の課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を修了見込みの者で、次の条件(⑴必須、⑵と⑶はいずれか)を満たし、在籍学校長が責任をもって推薦できる者
⑴合格した場合は、必ず入学する者(※第2志望学科で合格した者も含む)
⑵中学校、義務教育学校後期課程又は中等教育学校前期課程における2年次及び3年次の絶対評価で表した9教科学習成績5段階評定の総計が74以上の者
⑶中学校、義務教育学校後期課程又は中等教育学校前期課程における2年次及び3年次の絶対評価で表した9教科学習成績5段階評定の総計が70以上の者で、中学校、義務教育学校後期課程又は中等教育学校前期課程在学中に次のいずれかの要件を満たす者
 ①生徒会長または生徒会副会長であった者
 ②体育系部活動で、次の基準以上の成績を収めた者
 ・地区予選を経て都道府県大会へ出場した者
 ・市や郡の大会において優勝した者、あるいは準優勝した者
 ・地区予選を経ない都道府県大会で、8位以上の成績を収めた者
  ※団体競技においては、正選手として活躍した者
 ③校外体育系クラブチームに所属する者については、都道府県大会8位以上の成績を収めた者
  ※団体競技においては、正選手として活躍した者
 ④文化系部活動又は校外の文化活動で都道府県水準以上の大会において、顕著な成績を収めた者

豊田高専とも違い、(3)の生徒会や部活動などで実績を残した人については、評定の基準が若干低く設定されています。
(2)では評定74以上、(3)では評定70以上となっており、(2)と(3)のいずれかを満たさなければなりません。

一般入試(学力検査)は学力のみでの判定

高専の入試のうち一般入試(学力検査)については、文字どおり当日の学力検査と調査書の評定、そして面接による判定が行われます。
例えば、先ほど紹介した鹿児島高専の場合、学力検査が理科、英語、数学、国語について行われ、数学が200点、他の科目が100点で合計500点満点、調査書の評定が2年生及び3年生の9教科5段階評価で90点満点となります。
学力検査を実施する科目や配点については、学校により異なるので、それぞれの学校の募集要項を確認しておきましょう。
ただ、いずれの学校も一般入試においては、調査書の内容のうち評定以外の部分については考慮されないものと考えられます

今後も高専入試の方法が見直される可能性はある

高専の入試においては、推薦入試と一般入試で考え方が異なる部分がはっきりしているように思われます。
また、推薦入試を実施する際にも、出願資格にはあくまで評定の基準のみ記載されているという学校が多くあります。
ただ、合否判定では学校生活や学校外での活動などが考慮されるため、生徒会や部活動をしている方が有利になることは否定できません。

一方、一般入試については、学力検査と評定による判定が行われています。
ただ、この方法が絶対的なものとはいえず、今後さらに見直される可能性はあります。
例えば、中学校ごとに学力差があるため、評定が低くても学力は高いというケースがあると、どのように判定するか難しくなってしまいます。
このような問題に対応するため、高専としてさらに入試方法を見直すことも考えられるので、注視する必要があります。

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